再開
フィンとの談笑を終え、兵舎のテントを出たフォーゲルとリーベは訓練場へ向かう。そこにはジンクスがコーヒーを飲みながら待っていた。
「お、来たか。昨日は忙しくてやれなかったが、今日こそ訓練再開だ。」
「はい!再び始めます!」
ジンクスの声を聞き、フォーゲルとリーベが共に答える。彼らは数日前の戦闘によってさらに成長し、実力が伸びていた。それは、共に戦っていないジンクスでも、話を聞いて知ることができた。
「リーベ、お前。俺が兵長から聞いたんだが、飛んでくる手榴弾を銃で撃ち落としたんだってな?」
「あ…それは偶然です!」
リーベは偶然だと言うが、確かに不思議なほどその瞬間の彼女は、正確かつ素早い反応速度で銃を発射した。もちろんリーベも自分がなぜそうしたのかはよく分からない。ただ手榴弾が飛んでくるのが視界に入っただけだった。
「偶然だと?おい。それは実力だ。お前は俺が見るに、才能がイカれてるぞ。」
「そ…そんなことは…」
ジンクスの大絶賛にリーベがもじもじとしながら否定する。リーベは、訓練ばかりしていた頃も、盗みを働いていたフォーゲルよりも密かに体力が良かった上、力も案外強かった。
「リーベ、お前は上手いんだよ。」
フォーゲルが物憂げに、目を半ば閉じながら言葉を発する。弁解するなと言わんばかりの声色に、リーベはさらに戸惑う。
「フォーゲル…あなただって強いわ…」
「俺はまあ、普段は泥棒ばかりしていた奴だからな。」
フォーゲルに責任を転嫁しようとするかのようなリーベの言葉に、フォーゲルはきっぱりと口を開く。そしてジンクスは、二人の頭を両手で荒っぽく掴んだ。
「お前たち…よくやった。フォーゲルも、言及はなかったが、フィンがあれだけ持ちこたえたのを見ると、きっと仕事を立派にやり遂げたんだろう。」
「へへ…当然でしょう。」
フォーゲルがジンクスの称賛に照れくさそうに、間抜けな笑顔を見せる。その姿を見てリーベは心の中で笑いを堪える。
「じゃあ、そろそろ始めるぞ。お前たちには、俺がもっと厳しくしごいてやるからな?」
「え…?あ…あ、はいっ!!」
驚いた様子を隠しきれず、二人が同時に「え?」という間抜けな表現を使うが、すぐに教官の命令だと思い出し、素早く答える。
「じゃあ、まずは腕立て伏せからだ。さあ、120回実施!」
「いちに!いちに!」
腕立て伏せ120回は、少年兵であることを考慮すれば、とてつもない運動量だった。従来の100回よりも20回増えたのだ。だが、数週間の訓練で体を鍛えた二人の少年兵は、歯を食いしばりながら、かろうじて訓練を続けていく。
「はぁ…はぁ…5…0…回…」
「おいおい。休んでもいいぞ。まるで俺が虐待しているみたいじゃないか。」
ジンクスは訓練は厳しく見せるが、回数が多ければ休む時間を与える。およそ50回ほどで、最低5分は楽に休ませる配慮をするのだ。
「あー…疲れた、疲れた…」
汗が玉のように結ばれるが、冷たい風にすぐに凍りつき、体はさらに冷える。それでも熱は体内から絶えず放出されていた。
「さあ、再開するぞ!残り70回だ!休憩なしだ!」
「ね…いっ!!」
5分の休憩を終え、70回を休まず連続で行う。そして30分が経ち、120回がつついに終わった。ジンクスは満足そうに二人を見つめながら話しかける。
「普段より20回増えたが、どうだ?」
「つ…かれ…まし…た…」
「そうか?俺はな、本当は150回にしようとしてたのを我慢したんだがな〜」
その言葉を聞き、フォーゲルとリーベは驚愕する。150回は到底できるものではない。考えてみれば120回で良かったと思うのだった。
「120回で続けましょう。」
「いや?そのうち増やさないとな。お前たちの訓練はあと一ヶ月は続けてやるからな。」
「一ヶ月もですか…?」
「正規の兵士になるのが簡単だと思うか?俺は一年もかかったんだぞ、この野郎。」
老練な口調で二人に宣戦布告をするジンクス。彼は冗談めかしているが、いつも言ったことは守る性格だった。
その間、フォーゲルとリーベは小さな椅子二つに座り、荒い息を吐く。彼らの小さな口からは白い息が絶え間なく吐き出されていた。
「まあ、お前たちはそういえば昔は何をして暮らしていたんだ?」
「昔ですか?俺は言った通り…泥棒…で、こいつはただ薪を割ったり、家事の手伝いをしたりしていましたね。」
「そうか?フォーゲル。お前はか弱い女の子が一人で斧を振るうのを放っておいたのか?やれやれ…」
突然ため息をつき、情けないといった視線を送るジンクスに、フォーゲルは慌てて口ごもる。
「いや…だって…こいつは金を稼がないじゃないですか?」
「泥棒が仕事か!」
「確かに、おばさんは市場で稼いでいたのに、フォーゲルは盗みばかりしていましたね。お肉が食べたいって言ってたかな…」
愉快で機知に富んだ悪魔と、可愛い悪魔がそれぞれフォーゲルを指摘する。フォーゲルは弁解の余地がないとでも言うように頭を掻くばかりだった。
「俺の妻と子供は、今この部隊からはるか離れたエアフォークという街に住んでいる。まあ、聞いたことはあるだろう?」
突然居住地の話を始めるジンクス。彼は少し嬉しそうで、懐かしむような口調だった。
「エアフォーク村…確かに聞いたことがあります。ええと…この戦争中に食べ物も多く、遊びも多い裕福な都市だと。」
「そう、そうだ。裕福な街だ。だが、俺の家族はそこでも少し貧民街に住んでいるんだ。その前は別の村に住んでいたんだが、そこが占領されてしまってな…」
「仕方なくエアフォークへ行って、貧しくても安全に暮らしているんだ。俺が軍人になったのも、村が占領されたことへの復讐心からきてる。まあ、ほとんどの軍人がそうだろうがな〜」
「そうなんですね…軍人は確かに、お金だけではなりにくい職業ですよね…」
過去の話をするジンクスに、リーベが共感するようなジェスチャーと口調で頷く。彼女は少しジンクスを哀れんでいるようにも見えた。
「お前たちも後で行ってみろよ。この雪山に閉じこもっていると、気がおかしくなるぞ?あそこにはお前たちみたいなガキが喜びそうな遊具もたくさんあるんだ〜しかもあそこのステーキは最高だぞ!」
「え?本当ですか…?」
フォーゲルは「ステーキ」という単語に注目し、目を輝かせる。リーベは小食だが、フォーゲルは昔からいつだって肉には喜びを隠せず、一日中浮かれていた。そしてリーベは、そんな彼を静かに可愛らしいといった様子で見つめるだけだった。




