怒り
ティエルシとアベルは結局、体力という限界を超えられず、それぞれの場所で倒れ込むように息を荒げてしまう。
彼らは仲間が危険な時に疲労を理由に休んでいる自分たちを責めながらも、機関銃手のフィン伍長を心配する。
ティエルシは非常に尊大でひねくれているように見える話し方や外見だが、実は誰よりも仲間を心配し、アベルを深く大切に思っている。そしてアベルは、普段は一日に一度話すかどうかの口数少ない内向的な性格だが、ティエルシのことを心から案じている。
そうして二人が息を荒げている間に、敵の指揮官と兵士たちは既に橇に乗って、フィン伍長が位置するガトリングガンが見える場所まで来てしまった。
「あの野郎か…さて、今からあのガトリングガンを撃っている機関銃手を狙撃する。銃を構えろ!!」
敵指揮官を含め総勢5名の軍人たちが、最低100mはありそうな地点で木の陰に隠れ、ガトリングガンを撃っているフィン・ブルツェルを狙う。彼らは寒い天候で凍えたように冷たい鉄の塊を手に持ち、震えないように努めながら、一斉にフィンに向けて銃口を突きつける。
「撃て!!!!」
その言葉が終わるや否や、銃声が一斉に鳴り響き、合計4発の弾丸がフィンに向かって空気を切り裂き突進していく。当然、弾丸を避けることは不可能であり、フィンは素早く首を回して回避しようとするが、既に遅い。弾丸は一斉に彼に向かって猛烈に飛んでいく最中だった。
その時、白髪の兵士が走り込み、身を投げ出して4発の弾丸をフィンの代わりに受け止める。
「くああああっ…!!」
全ての銃弾を受けてしまった白髪の一等兵、ハイトヴィン・ホーケルは、フィンの目の前で血を吐きながら倒れる。弾丸が体を貫通し、血が飛び散ってフィンの顔と体を覆う。フィンは受け入れがたい表情でガトリングガンのハンドルを放し、目の前に倒れたホーケルに駆け寄って容態を調べる。しかし、すぐに再び弾丸が飛んできて、フィンは間一髪で壁を遮蔽物として避けることに成功する。そして、下に引きずり降ろしたホーケルを看病しながら、泣きそうな表情を浮かべる。
「ホーケル…おい!起きろよ!!ここで死ぬな…!!」
ホーケルの体と腕、足には合計4つの大きな穴が開いており、そこからはそれぞれ大量の血が噴き出していた。その様子を見て、フィンはどうしていいか分からない。衛生兵を呼びたかったが、イーヴァン・ケーリーは後方で辛うじて戦闘を続けており、ここまで来て彼らを治療する余裕はなかった。その時、ホーケルが血混じりの咳をしながら最後の言葉を伝える。
「伍長…どうか、勝ってください…」
ホーケルは残念そうな表情を浮かべながら、銃弾に貫かれた右腕を頭上に持ち上げ、最後に敬礼の姿勢をとる。そしてすぐにその腕は力なく倒れ落ちる。
「……」
フィンは今にも泣き出しそうだったが、戦闘中だという事実を頭の中で反芻し、後方にいる二人の少年兵に大声で叫ぶ。
「フォーゲル、リーベ!!!!給弾!!!!!!!!!!!!」
その言葉を後方で聞いたフォーゲルとリーベは、一瞬何が起こったのか頭を巡らせようとするが、考える時間もないことを知っていた。
「リーベ、早くそれを持って行くぞ!!!」
「うん!お急ぎのようだね!」
二人の少年兵は事の次第を知らないまま、ただ重い弾薬箱を精一杯抱えて前方へ駆けつけた。そして着くやいなや見えたのは、いつもの愉快な姿はどこにもなく、真剣な顔で待っていたフィンだけだった。
「敵は左側にいる。彼らを阻止しないと。」
その短い言葉だけを言い終えると、すぐにガトリングに飛び乗り、残りの弾丸で100m先の敵に攻撃を浴びせかけ始める。そしてその間、フォーゲルとリーベはホーケルの遺体を見ることなく、何かが起こったことだけを察し、不器用に弾帯をガトリングに装着する。
「……」
この小隊内に存在する唯一の強力な兵器はこのガトリングだけだった。補給が制限される状況でも、ガトリングだけがこの小隊を敵の侵入から守ってきており、フィン伍長はホーケル一等兵と共に数えきれないほどの敵を処理してきた。
ホーケルはフィンではなくガトリングガンを守るために銃弾を代わりに受けたと言っても過言ではなかった。ガトリングガンを撃つフィンが死ねば、それはすぐに小隊の全滅につながりかねなかったからだ。そして、この事実を知るフィンは、このガトリングに全ての願いを込め、激しく弾丸を連射する。
「うおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!」
遮蔽物を全て取り払うかのように、フィンは血の付いたハンドルを荒々しく握る。彼の表情には怒りと憐憫が込められていた。敵は木を遮蔽物として隠れていたが、ガトリングガンの火力は木では防御できなかった。
「うわあああああああ!!!」
ついに一本の木が鋸で切られたように倒れ、その背後にいた兵士はガトリングガンで体に穴が開けられ、内臓を流し出し、残酷で悲惨な最期を遂げる。その光景を見たフォーゲルとリーベは、その惨状を忘れるために素早く別の場所に視線を逸らす。
「リーベ…ところで…ホーケル一等兵は…?」
「…」
フィンが怒りに満ちた様子を見て、フォーゲルはホーケルが死んだことを悟ってしまう。リーベは言葉なく深く頭を垂れている。フォーゲルもまた、ホーケルと会話を交わした日々を思い出し、涙があふれそうになるが、フィンを見てそれをこらえる。
「絶対に…許さない。」




