親の愛を受けて
「おかえり!!!」
そんな声が響く、茶色とも黒とも言えない長髪をおろした女性、母リザの声だ。
「今日は何をしてたのかなー?」
いつもこうである。もう14だというのにいまだに子供扱いをされ続けている。母さんは特に魔法が扱えるわけでもないのでむしろ俺よりも心配なのだがそんな事をわざわざ口には出さない。
「今日はいつも通り魔法の練習をしに行ったら王立アカデミーの人に声をかけられたよ」
そんな事を言いながら資料を手渡す。
「え!!グラディスちゃんやっぱり天才だったのね!!すごいわ!!えーと…え、?」
何かを見つけた瞬間母さんが顔を曇らせる。
「えっと、これは王都アイトワラスにあるんだよね?すっごく遠い気がするんだけどどうするつもりなの、?」
「一人で行こうと思っているけどだめかな?」
「それはお母さんさみしいな。グラディスちゃんのことが心配だし、ご飯もちゃんと食べてほしいわ」
やはりこうなるか、もちろん魔法でご飯を作る事もできるので心配することはないのだが、
「魔法でご飯も作れるよ?」
「でもグラディスちゃんはまだ子供だもん。一緒に行くわ!」
なんでそうなる、だが断る理由もないか。そんなときもう一つの声が聞こえた。
「やっぱりお前は天才だな!!噂を聞いたぞ!お前が剣でもブリアスに勝ったらしいじゃないか!しかも
一閃剣斬を扱ったらしいな!これからは俺が剣も教えてやる!」
誰であろう俺の父ファルガスだ。今まで剣をずっと教えたそうにしていた父からすればあの噂をすぐに聞きつけるのは当然か。そしてやはり俺の容姿は父に似ているな。
「あなた聞いて!グラディスちゃん王立アカデミーに招待されちゃったの!王都に一緒に行くわよね?」
これはいよいよ一緒に行くしかなくなってきたな
「もちろん行こう!さあ3人で王都に行こう!」
2人はとても騒がしいが、嬉しそうだったので俺は特に何も言うことなく王都に行く準備をした。
「ここが王都ね!やっぱり王都はすごいわねっ」
確かにここはすごい。近づかなくても分かるほどのものすごい魔力がこもった建物、俺の方でも破壊する事を苦労しそうなハイレベルの防護結界、これは恐らく対魔族のために作られたものだろう。他にも冒険者が持っている剣にも中々の魔力がこもっている。ランターナでは見ることができなかった素晴らしいものばかりだ。
「グラディス!剣を買いにいくぞ!これから一緒に特訓だ!」
いつもなら騒がしいと感じるが今日は俺の心も躍ってしまっている。
「高い買い物になるぞ?」
父は笑う。
「お前のためなら高くても構わないさ」
母は先に新居に向かうらしい。両親は2人で定食屋を営んでいるのでおそらくこちらでも生活に困ることはないだろう。なぜならうちの料理はどれも絶品だからな。
俺は父と剣を買いに来た。父はいつになく真剣そうな顔つきで剣を選んでいる。
「うーん、どれがいいかわかんないな!」
やはりそうだろう。別に父はそこまで魔力があるわけではない。少し剣を扱える程度なので田舎町に比べるとどれも優れた性能をしている剣を優劣つけることはできないだろう。
そんな事を思いながら俺は一つの剣に手を伸ばす。
すると定員が少し驚いて、
「お客様、それは魔剣ですがよろしいでしょうか?」
魔剣と普通の剣は何か違うのだろうか
「剣と何が違うんですか」
「魔剣は魔力を扱って斬る剣です。魔力を持つ人が扱えば強い武器となりますが、魔法を扱えない人からすると使い勝手が悪いかと、」
俺にピッタリの剣だな
「ならこれで大丈夫です。」
父も剣を選び終わったらしく選んだ剣を購入してもらい店を後にした。
「グラディス、本当にありがとうな。俺は息子と剣を交わすのが夢だったんだ。お前は魔法の才能もあるし正直剣も俺よりも扱える気はしているが後1年だけ俺と剣を交わしてほしい」
「もちろんだ」
俺が頷くと父さんは嬉しそうにする。久しぶりに親子で肩を組みながら新しい家へと向かっていった。
そこからの時間はとても早く流れていった。父と剣を交わし、魔法をさらに極め、アカデミーの入学試験のために座学もした。そして入学試験の半年前に魔法の才を発現させ、2カ月前は剣の才も発現させた。どうやらこれは異常なことのようで同時に2つ発現させたのは過去に2人しかいないらしく、どちらも1500年前の人らしい。そして才を発現させるといつかその人にしか使えない特殊技を得られるらしい。もちろんこれは座学で得た知識だ。この調子ならおそらく合格することもできるだろうと安心しながら、特訓を続け、いよいよ入学試験前日となった。
「グラディス、お前この1年でかなり大きくなったな。やっぱり天才だよ。1年間剣を交わしてくれてありがとな、まあ全然勝てなかったけどな!!」
父さんは笑いながら少し寂しそうに言う。
「父さん、何を言っているんだ、これからも剣の相手になってくれるんだろ?」
すると父は目を見開きとても嬉しそうにした。
「グラディスちゃんいい子に育ったわねっ。ほんとに優しい子だわ、」
すると母はお守りを差し出してきた。
「グラディスちゃんのために作ったの!明日の入学試験頑張ってね!」
涙が溢れそうになった。俺はこんなにも恵まれているのか、とても幸せだ。
「ありがとう、母さん、父さん」
入学試験が終わっても家で暮らすのだがなぜかとても感極まってしまった。
その後3人でいろんな話をしながら眠りに入った。
しれっと2つの才を発現させてるんですよねー。
これからもできるだけ親は登場させますねっ