96話 ラスさんがおっしゃっている。
96話 ラスさんがおっしゃっている。
「ああ、いや、しかし、貴様らのクラスの担任は、あのカドヒトを撃退できる『非常にすごい先生』だ。それほど素晴らしい教師の教導を受けている3組ならば、あるいは、1組が相手でも造作もなく倒してしまえるのだろうか? ん?」
と、ゴリゴリに煽っていく。
ストレス発散の対象にされたラスは、
ギリっと奥歯をかみしめながら、
屈辱に耐えつつ、
「ぇ、いや、それは……」
絶対に勝てない。
それは分かっている。
だから何も言えない。
悔しくて歯噛みすることしか出来ないラスに、
ケイルスは、続けて、
「なぜ、そんなにも、歯切れが悪いんだ? 貴様の担任はすごいんだろう? あのカドヒトを撃退した超人なのだろう? さっきそう言っていたじゃないか」
「そ、それはそうですけど、でも、い、1組には……」
そこでチラッとクロッカを見るラス。
ラスだって、それなりの実力を持っているので、ケイルスを含め、『普通の学生』が相手なら、例え、1組所属であろうと、なんとかやり合うことはできるが……しかし、クロッカは……クロッカだけは、どうしようもない。
ヤム○ャがベジ○タに挑むようなもの。
彼女だけは、実力の桁が違いすぎる。
「素晴らしい実力を持つ貴様の担任のお墨付きもある。間違いなく、クラス対抗戦で、貴様の3組は優勝できるだろう」
「……」
「3組の完全勝利を目の当たりにしたあかつきには、これまでの無礼を全て清算させてもらおう。貴様にはもちろん、そこの魔人教師にも頭を下げようじゃないか。大変失礼なことを言ってしまい、もうしわけありませんでした、と誠心誠意、心を込めて、謝罪をさせてもらう」
「……」
「ただし……」
そこで、ケイルスは、獲物を刈り取る捕食者の目になって、
「もし、3組が負けた時は、逆のことをしてもらう」
「……え」
「当然だろう? 条件は同じにしないと。1組が負けた時、私は頭を下げるんだ。となれば、3組が負けた時には、貴様に……いや、そこの魔人に頭を下げてもらわないと」
「っ」
「一応、貴様ら3組が負けた場合の話もさせてもらったが、実際のところでは、もちろん、そんなことにはならないだろう。なんせ、貴様ら3組の担任は、あのカドヒトを撃退した、素晴らしい力を持つ魔人なのだから」
「……」
「どうした? 急におとなしくなって。さきほど、私に決闘を申し込んだ勢いはどこにいったんだ?」
「3組では……1組には……勝てません。だから……その賭けは……うけません」
唇をかみしめながら、そういうラスに、
ケイルスは、虫けらを見る目で、
「尻込みするぐらいなら、最初から息巻いてくるなよ、雑魚が」
差別思想に階級思想。
蔓延しまくっている選民思想。
上の人間は、下の人間に対して何をしても許される世界。
……そんな世の不条理を目の前で展開されたセンは、
その瞳に、静かな炎を携えて、
「1組に勝つことなど造作もない。俺が本気を出せば余裕だ……と、こちらのラスさんがおっしゃっている」
と、ケイルスに対して、堂々と、そんなことを言い切った。
それに対して、何より強い反応をしめしたのは、やはりラス。
「え、ちょ、先生?!」
ラスの動揺をシカトして、
センは、ケイルスに、続けて宣言していく。
「首を洗って待っていろ、ケイルス。てめぇだけではなく、1組全員、まとめて八つ裂きにしてやる……と、こちらのラスさんが豪語している。……すごいな、ラス。お前の覚悟、見事だ。担任として鼻が高いぞ」
むちゃくちゃな事をほざいている担任に、
ラスは、冷や汗をまき散らしながら、
「せ、先生! ……いい加減にしてください! 無理です! 2組が相手なら、まだ、勝てる可能性もなくはないですが、1組は無理です!」
と、常識的な言葉を叫ぶラスに、
センは、たんたんと、
「俺に魔改造された人造戦士サイコハロと、これから俺に魔改造される予定の人造魔導士メタルラスがいれば、相手が1組だろうが幻の0組だろうが関係なし。秒で根絶やしにできる。あの俺が言っているんだから間違いない。俺は詳しいんだ。多分。知らんけど」




