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85話 高火力の蹴り。


 85話 高火力の蹴り。


「……あり……がとう……ございました……助けてくれて……先生が、あそこまで強いとは……思っていませんでした……それに、そんな……命懸けで、守ってくれると……思ってなくて……だから……」


 と、いろいろな思いを込めて、グダグダ言っているラス。

 センは、そんな彼の胸倉を、グっと掴んで、


「てめぇを守る気は一切ねぇ。てめぇが死のうが生きようが、どうでもいい。だから、俺が、てめぇを命がけで守るってことは絶対にねぇ。てめぇの『勝手な希望願望妄想』を、俺に押し付けてくるんじゃねぇ」


「……」


「俺は、教師としての、最低限の仕事をこなしただけ。だから、『今からお前に投げかける言葉』も、全部、ただの最低限の仕事の延長でしかないと、しかと心得よ」


「……ぇ」


「お前の差別主義思想は、弁護のしようがない汚物の権化だが……リノを殺さなかったことだけは評価してやる。グリフィンド○ルに10点」


「……グリ――」


 ラスが疑問顔で口を開くと同時、

 センは、ラスの頭をデコピンではじいて、


「分からんやつだなぁ。俺の言葉に一々反応すんなっつってんだろ」


 と、そんな戯言で締めくくった。



 ★



 カドヒト撃退から数時間後、

 センは、エトマスに呼ばれ、理事長室にきていた。


 理事長室の奥では、エトマスが、机に腰をかけて、センをにらみつけている。

 回復魔法で、基本的なケガなどは治っているが、『カドヒトの蹴りによって刻まれた顔面の深い傷』は、まだクッキリと跡が残っている。


「私に、何か言うことがあるんじゃない?」


 呼びつけられて、登場したセン……に、開口一番、エトマスは、そんな言葉を投げかけてきた。

 センは首をかしげて、


「理事に何か言う事? ……えぇと……ああ……お怪我、大丈夫ですか? 顔の傷、痛そうっすねぇ。へっへっへ」


「何がおかしい!」


「……いや、別におかしくて笑ったってわけじゃないっすけど……ちょっとした愛想笑いといいますか……」


「貴様のせいで、私がこんなケガを負ったのだぞ! わかっているのか!」


 と、激しくヒステリーを炸裂させてくるエトマスに、

 センは、より一層、首をかしげて、


「……俺のせい? あなたがケガを負ったのが? おっと、こいつは、また、ずいぶんと難しい役割論理っすねぇ……三日くれます? どうにか、その神秘のロジックを解き明かして見せるんで」


 などと、はっちゃけていくセンとの距離を秒で詰めて、

 センの顔面に、


「くえっ!」


 高火力の蹴りをぶち込んでいくエトマス。


 どうやら、自分がカドヒトにされたことを、そのまま、センで再現している模様。


「……カドヒトが、学院に強襲を仕掛けてきた理由は、どう考えても、貴様の勧誘だろうが! 貴様さえいなければ、学院が狙われることはなかった! すべては貴様のせいだ! いったい、どうこの責任をとる!!」


 と、だいぶ無茶な理屈をつきつけられたセンは、


「ぃ、いや、あの、俺、けっこう、ボロボロになりながら、カドヒトを撃退したんですけど、その点、評価とかされないんですかね?」


「テロリストをとり逃がしておいて、よくもまあ、評価をねだれるものだ! 傲慢と呼ぶのもはばかられる! 貴様、もしかして、カドヒトが、貴様と同じ魔人だから、手心を加えて、あえて逃がしたのではないだろうな! というか、もしや、グルか?! カドヒトに暴走させ、それを止めるマッチポンプ! だとしたら、大問題だぞ! なんというヤツだ! 貴様、これは、責任問題どころか、国家反逆罪だ! 死刑は免れない!!」


「勝手な妄想を繰り広げたあげく、その妄想を軸にした処分を下そうとするとか……こいつは、もはや、ヒステリーどうこうってレベルの話じゃねぇなぁ……」



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