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84話 教師としての最低限の仕事。


 84話 教師としての最低限の仕事。


 奥歯を噛み締めて、

 自分自身の本音や建前と、

 真摯に向き合うラス。


「……ぐっ……」


 ラスの人生の中で、間違いなく、最も濃厚な『拙い時間』が3秒ほど流れたところで、



「ニ閃!!」



 頭上から響いた声。

 反射的に目を向けると、

 次元の穴から飛び出してきたセンが、

 両手に持つ二本の剣をキラませて、

 カドヒトに落下特攻を決め込んでいた。


 かなり見事な奇襲だったが、

 カドヒトは、すんでのところで、

 ヒュッと、緊急回避に成功した。


「ちっ」


 渾身の奇襲を回避されて、

 心底鬱陶しそうに舌を打つセン。


 センは、両手の剣を構え直しながら、


「よぉ、カドヒトさん。ご機嫌麗しゅう」


「……逃げたと聞いていたが?」


「お前を殺すための道具を取りに行っていただけだ。授業をしている時に、完全武装しているやつなんざいねぇだろ?」


 そう言いながら、二本のでかい剣を魅せつける。


「……なるほど。本気で殺し合う気か。……しかし、本当にいいのか。何度も言っているが……お前も魔人だ。人間の犬なんかやめて、こっち側にこないか? お前なら歓迎するぞ。ともに、このくそったれな世界を変えようじゃないか」


「俺はクロッカ様の犬。基本的に、それ以上でもそれ以下でもないが……とりま、今の俺は、一応、教師……教師の職務を勤勉にこなすつもりはないが……最低限の仕事ぐらいはこなしてやるさ」


「ふむ……ちなみに、教師としての最低限の仕事とは?」


「学校に不法侵入してきた変態を、『さすまた』で取り押さえることさ!」


 そう言いながら、センは、二本の剣をブン回す。

 バキバキのゴリゴリに殺し合う二人。


 その途中で、カドヒトが、センに、


「いいぞ、センエース! やはり、お前は強い! その強さは貴重だ! 俺の配下になれ! なんだったら、俺の上司でもいい! とにかく、お前の居場所はそこじゃない! こっちにこい! 一緒に世界を変えよう!」


「やりたきゃ、独りでやってろ! 俺は俺の大事なものだけ守る! 世界だの、なんだの、そんなことを考えられるほど、俺の懐は、デカくないんでねぇ!」


 ぐっちゃぐちゃに殺し合う二人。

 血飛沫が乱れ飛んで、

 頻繁に骨が砕ける音が鳴り響く。

 攻撃魔法を使った際は大爆発が巻き起こり、召喚魔法を使うと、見たこともない凶悪な化け物が現れて、ところせましと暴れ猛る。


 そんな、物騒がワッショイしている濃密な時間が、5分ほど経過したところで、


「くそが……今日のところも、引き分けにしておいてやるが……忘れるなよ、センエース。俺がお前を狙っていることを。お前はこっち側にいるべき人材だ」


 最後にそう言い捨てて、

 カドヒトは、地面に出現させた闇の穴へと潜っていった。

 カドヒトが消えたとほぼ同時のタイミングで限定空間が解除される。


 残されたボロボロのセンは、その場で大の字になって、


「しんどぉ……ありゃ盗めねぇわ」


 と、お決まりのセリフを口にした。


 その、異世界人目線では意味不明な言葉に、当然の疑問を抱いたラスが、


「ぬすむ? ……え、さっきの魔人から、何かを盗もうとしていたんですか?」


 と、マジレスしてきたので、

 センは、ダルそうな顔で、


「俺の戯言に、いちいち顔真っ赤で反応すんな。意味あることなんか、基本、絶対に言ってねぇんだから。小鳥の囀りぐらいに思っておけ。そしたら、なんか和むだろ。知らんけど」


 暴走するファントムトークに困惑するばかりのラス。

 いったん、センの言動を深く考えるのはやめて、


「……あり……がとう……ございました……助けてくれて……先生が、あそこまで強いとは……思っていませんでした……それに、そんな……命懸けで、守ってくれると……思ってなくて……だから……」



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