71話 決闘を申し込む。
71話 決闘を申し込む。
「俺が授業をしている時は、俺の話だけに全集中しやがれ。それができないマヌケは殺す……と言いたいところだが、そこはグっと我慢して、『教科書を破く』という、『優しいこと』に抑えてやってんだ。感謝しろ、ボケ」
「う、ぐっ……許さない……両親のことまで……侮蔑するとは……」
と、親を侮蔑されたことに対して怒り心頭の彼に、
センは、
「親を侮辱されて腹が立ったのか? てめぇは俺をずっと侮辱しているのに? 俺が、それに腹を立てないとなぜ思う? 相手を侮辱していいのは、侮辱される覚悟があるやつだけなんだぜ」
「家畜でしかない魔人ふぜいが偉そうに――」
「仮に俺が家畜だったとしても、侮辱していい理由にはなってねぇんだよ。食べる前に『いただきます』と手を合わせるのは、命に対する礼儀であり敬意。むしろ、家畜にこそ、最大級の礼節を重んじるのが、『まともな人間の在り方だ』ってのが、俺の考え方だ。別に、思想を押し付ける気はないが、『家畜は侮辱していい』っていう、『ありとあらゆる想像力に欠ける頭の悪い思想』に関してだけは、全力で侮蔑させてもらう。品性のかけらもないみっともない思考。お前は、根本の頭が悪い。お前の親も、確実に頭が悪い。バカを育てたやつはバカなんだよ。これはゆるぎない事実だ。てめぇの親はゴミだ。なぜ会った事もないのに断定できるか。てめぇがゴミだからだよ。親を侮辱されたくないなら、侮辱されない生き方をしないといけない。だが、てめぇはそれが出来なかった。『親が侮辱されて腹が立つ』などと、一丁前なことをほざいているが、お前は、それを口にする権利がない。その程度のことも分からないカス……それがお前だ。分かるか? 言葉、通じているか? 理解できているか? おい、バカ。聞いているか? もしもーし」
と、限界まで、とことん煽り散らかしていくセン。
「ゆ、許さない、許さない、許さない!」
と、ブチギレているラスに、
センは、
「やっぱ、言葉通じてねぇか……わかっているか? てめぇは、今、余裕で家畜以下だぜ」
そう言いながら、ラスを、教室の壁に向かって投げつける。
「ぐわぁっ!」
打ち付けた背中をさすりながら、
あらくなった呼吸を、ムリヤリ、整えて、
「ゆ、許さないぃいいい!」
貴族としてのプライドを全力でむき出しにして、
「決闘を申し込む!!」
と、センを指さして宣言。
と、同時に、
「豪氷矢ランク3!!」
と、自身に使用可能な最大の魔法を使って、
センに攻撃を仕掛ける。
その魔法には、『本気の殺意』がこめられていた。
そんな、本気の殺意で魔法を使う彼を見て、周囲の面々が青ざめていた。
『いや、ラス。流石にそれはやりすぎだ』
とでも言いたげな顔をしているが、その想いがラスに伝わることはない。
ラスの本気の魔法が直撃する寸前、
センは、
「ほう……」
人差し指一本で、その魔法を空中で完全停止させると、
じっくりと、その魔法の『程度』を観察して、
「……やるじゃないか、ラス。お前の魔法、ガキにしちゃ、なかなか悪くないぞ。まあ、矢系の魔法だから、出来れば、貫通重視か速度重視で伸びてほしかったところだが……お前の豪氷矢は、MP消費量軽減特化になっているな……矢系は、消費MPが最初から少ないから、将来的に『決定力不足待ったなし』の『この伸び方』は、ちょいとかみ合っていないが……でも、熟練度の方は、なかなかだ。丁寧に鍛錬し、使い込んでいるのが見てとれる」
しっかりと吟味した上で、評価すると、
センは、ラスに視線を向けて、
「ラス。お前はカスだが、この魔法だけは、カスじゃない。認めてやるよ」
「魔人ごときに褒められたって嬉しくないんだよぉおおお!」
と、全力で差別を叫びながら、
ラスは、さらに、魔力をひねり上げていく。
「豪氷矢ランク3!!! 豪氷矢ランク3! 豪氷矢ランク3!」




