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70話 たっぷりのプライド。


 70話 たっぷりのプライド。


「俺は、ここに、『小学生に掛け算を教えるつもり』できたんだが……どうやら、『幼稚園児に数字を教える』という授業になりそうだ……マジかぁ……俺、学校の教師をやるつもりだったんだけど……実態は、保育士だったかぁ……しんどいなぁ……」


 と、深いため息をつくセン。

 流石に、ここまでしっかりと煽られてしまっては、

 もう、我慢することは出来ない。


 ラスがバっと立ち上がり、


「魔法を使うために必要なのはマナですよ! そんなくだらない質問はしないでいただきたい! 答えられなかったのではなく、答える気が失せたということが分からないのですか! 本当に、魔人は低能ですねぇ!」


 と、『たっぷりのプライド』を叫ぶラス。


 周囲の面々は、

 『お前が、センをシカトするって言ったんちゃうんかい』

 とでも言いたげな顔をしているが、

 しかし、ラスは、そのことに気づかないふりをして、

 センに対して、指をさし、


「魔人のカスみたいな授業など受ける気はありません! そんな『低俗なお遊戯』をしているヒマはないんです! あなたの相手をするよりも、教科書と向き合っている方がよっぽど有意義なんですよ! 我々の勉学の邪魔をしないでもらいたい! いいですか! われわれは、あなたの話を聞く気はない! わかりましたか!」


 と、強い言葉で『シカト宣言』をしてきた彼に、

 センは、面白そうに、ニっと笑って、


「教科書と向き合っている方が有意義ねぇ」


 そう言いながら、

 センは、ラスの近くまでスタスタと歩き、

 彼がつかっている教科書をヒョイと掴み、中身を確認していく。


「ぼ、僕の教科書を汚い手で触らないでください!!」


 と、そう叫びながら、センから教科書を奪い返そうとするが、

 そんなラスのムーブを、センは、ひょういひょいと回避しながら、


「……思ったよりもまともな教科書を使っているじゃないか。ゴミみたいな教材でクソみたいな勉強をしてんのかと思っていたが……ふむ……」


「それは、お父様が、僕のために用意してくれた特注の教科書だ! あなたの話を聞くよりも、その教科書と向き合っていた方がよっぽどマシだということがご理解いただけましたか! わかったら、さっさと返してください! 汚れる!」


 と、強い言葉で言われたセンは、


「お前の態度……イラつくな……」


 と、冷たい目で、そういうと、


「別に俺のことを教師として尊敬しろとは言わないが……汚いとまで言われてしまえば、俺としても、それなりに『対応しなければいけない行動』というものがある」


 そう言いながら、センは、

 ラスの特注教科書を、

 迷いなく、ビリビリィっと破りすてていく。


 大事な教科書を破り捨てられたラスは、


「あ、あああっ!」


 と、普通に青ざめていく。


「良い顔だ。絶望している顔。俺は、ガキのそういう顔を見るのが好きなんだ。心が洗われる気がするからな」


 などと、だいぶやべぇサイコな悪役のセリフを口にするセンに、

 ラスは、ギリっと奥歯をかみしめて、


「……お、親を交えて……」


「あん? なんて? 声が小さいぞ、虫けら。他人にメッセージを送る時は、腹から声を出せ。これは、人生のレッスン1だ。一つ賢くなれて良かったな」


「親を交えて、正式に、学校に抗議をする。あなたは自分が何をしたか分かっているのか。そんな――ふぐっ」


 と、ごちゃごちゃと脅しをかけてくるラスの口を、

 右手で、グっと強引にふさぐと、センは、さらに声を冷たくして、


「クソみたいなテメェの、ゴミみたいな親が、何をどう言おうと、知ったこっちゃねぇんだよ。そもそも、現状、『抗議されてんのはテメェの方』だろ。俺が授業をしている時は、俺の話だけに全集中しやがれ。それができないマヌケは殺す……と言いたいところだが、そこはグっと我慢して、『教科書を破く』という、『優しいこと』に抑えてやってんだ。感謝しろ、ボケ」



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