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7話 魔人の王。


 7話 魔人の王。


「そこに立て、セン。これから先の話をしたい」


 そう言いながら、自身は、ソファーのふかふかに腰をおろすパルカ。

 お互いの立ち位置をハッキリさせるという意志表示。

 『立場という幻想』にすがりつくのも小物ならではだが……しかし、そのことにも、パルカは気づかない。


「セン。君ほどの資質を持つ者は少ない。それだけの力を持っている『人間』は、十七眷属にまで出世させ、それなりの地位と報酬を約束しなければいけない……のだが、しかし君は魔人だ。ようするには『家畜』と同じ。十七眷属と同じ報酬を払う必要はない。魔人は、法によって権利を守られてはいないから」


 龍神族は、『先祖が定めた法律』――『憲法』に従って統治をおこなっている。

 その憲法『龍法』は、龍神族にとって絶対であり、好き勝手に変更することは出来ない。

 だから、『優秀な者』は、十七眷属として迎え入れなければいけないし、十七眷属に対しては、地位と名誉と報酬を与えなければいけない。

 ……ただし、魔人は例外。

 魔人に龍法は適用されない。


「だが、僕は、君に、それなりの報酬を約束しようと思う。君にはそれだけの価値がある。これは、私の誠意だ。ありがたく受け取り給え」


「ははーっ、ありがたき、幸せ」


 そう言いながら、センは深く頭を下げた。

 その様に対して、パルカは、満足そうにうなずくと、


「その従順さに対する、僕なりの誠意として、最初に、君の望みを聞いておこうと思う。これは、『君の願いを必ず叶える』という僕の『意志の表明』だと思ってくれていい。誇りにかけて誓おう。君の願いを必ず叶えると。……さあ、好きに望め。君は、『僕の命令に従う対価』として、何を望む?」


「これは、クロッカ様にも望んだことですが……魔人を私の下につけていただきたい。できれば大勢。なんだったら全部」


「……ふむ……」


 ソファーに深くもたれかかり、

 少しだけ思案すると、

 パルカは、センの目をジっと見つめて、


「大量の魔人を集めて、いったい、どうするつもりだ? 魔人の王にでもなろうというのか?」


「王は性に合いませんねぇ。『魔王』って響きは厨二的に、ずいぶんと魅力的ではある。それは事実ですが……しかし、国を統治したり、誰かを支配したり、崇められたり、持ち上げられたり……そんなもん、鬱陶しくて仕方ない」


「……では、なぜ、魔人を望む?」


「……」


 センは、数秒間の沈黙を経て、


「経験値にしたいから」


 と、黒い笑顔でそう言った。

 ニタリと、とことんまで、鬼畜な笑み。

 悪意と憎悪と殺意と歪み。

 すべてのマイナス色を詰め込んだような、その黒すぎる顔に、

 パルカは、ゾクっと心臓が揺らぐのを感じた。


「……ほう」


 額に汗が浮かんだ。

 センの底知れない圧に、軽く恐怖を感じている。


「……経験値か……なるほど…………あまり、推奨できない思想だが……まあ、いいだろう……」


 そう言いながら、

 パルカは、アイテムボックスに手を伸ばす。

 そして、特徴的なデザインの首輪を取り出すと、それをセンに投げ渡す。

 キャッチしたセンが、その首輪を、めつすがめつ見ていると、


「……その首輪は、誰にも外せない。契約の首輪。僕が命じれば、即座に、その首輪は、君の首をしめあげて、確実に殺す」


「……ほう、怖いっすね」


「それをつけるのであれば、君の願いを叶え、魔人をくれてやろう。いわば、それは、セーフティだ。現時点では、僕は、君が裏切るとは思っていない。しかし、今後、魔人を君の下につけていくとなると……君の総合戦力が、どんどんまして行くことになる。君自身もまだ若く、ここから成長していくことが見込まれる。完全に成長した君と、その下につく魔人の軍勢。その全てが反旗を翻したとなると……その厄介さは計り知れない」


「俺はパルカ様を裏切りませんよ。安心してください。俺、嘘ついたことないっすよ。マジっすよ。もっと言えば、『嘘』って概念が一体なんなのかすら分からないレベルですもん。なんすか、『嘘』って。俺は、それが、おいしいかどうかを聞けばいいんですか?」



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