69話 魔法とは。
前から言っていた通り、
今日から毎日投稿から、隔日投稿に変更します。
70話の投稿は、日曜日の朝になります。
69話 魔法とは。
「ひぃい! ひぃいいい!」
この世の地獄を経験したハロ。
『衝動だけでセンエースに上等をかましてしまったこと』を本気で後悔する。
しかし、後に、ハロはこう語る。
『全宇宙、全世界で最も尊き王に無礼を働いたこと、それは、私が一生背負うべき罰。しかし、その愚かしさのおかげで、私は、私の人生における最速のタイミングで、王の教練を賜ることができた。私は私の愚かさを、一生恥じると同時に、私は私の愚かさに感謝をしたいとも思っている』
★
――翌日の朝、
グレートティーチャー・センエースが、
自身が担当している3組の教室にむかうと、
クラス内では、静かな自習が始まっていた。
……ちなみに、ハロは、ここにいない。
彼は、つい数分前まで、センの教導を受け続けていたので、満身創痍でぶっ倒れている。
とても授業を受けられる状態ではない。
また、魔人兄妹も、ハロの看護を任されているため、ここにはいない。
……クラス内で『黙々と黙って自習を進めている学生たち』を尻目に、
センは、
「予習に余念がないとは大変結構。落ちこぼれクラスと呼ばれてはいるが、しかし、どうやら、やる気だけは1組級と見た。結構、結構」
と、何度も首を縦に振って、喜びを表現してから、
「それでは、授業を開始する。今日は『魔法とは何か。その神髄に迫る』という壮大なテーマでいこうと思う」
そう言いながら、黒板にかつかつと文字を描いていく。
「そもそも、魔法とは何か。これを一言で言える人はいるかな?」
と、質問を投げかける。
だが、誰も反応しない。
「あまりにも難しい質問だったな。これを答えられる者はいないだろう。仕方がない。だから、ヘコむ必要はない」
と、そんな、『煽り』と取れる言葉を受け止めて、
プライドの塊である『眼鏡担当のラス』が、グっと眉間にしわを寄せた。
ナメられっぱなしは許せない……という反骨精神がむくむくと膨れ上がってきたが、しかし、
(ダメだ……今日から、この魔人のことはシカトすると決めたんだ……反応するな……無視しろ……目の前の課題に集中するんだ……集中……集中……)
と、自分自身にそう言い聞かせる。
ほかの面々も、『今日からセンの事はシカトする』とクラスで決まってしまったため、反応しないようにしている。
『常識ポニーテール担当のリノ』だけは、ちらちらとセンに視線を向けているが、しかし、クラス内で正式に決まったことに、真っ向から逆らうほどのアナーキー精神は持ち合わせていないため、一応、ふんわりと、クラスの流れに乗っている。
誰も何も言わずに、センを無視して、黙々と自習を続ける……という、ある意味で、『だいぶストイックなこの空間』の中心で、
センは、
「……『お前ら程度の虫ケラでも答えられるレベル』にまで落とすと……そうだな……『魔法を使うためには、何が必要でしょう?』とかか? さすがに、これなら答えられるか?」
と、だいぶ攻めた煽りをかまされたことで、
『プライド担当のラス』が、ギリっと奥歯をかみしめた。
プライドの高い者は、侮られることを、ことさらに嫌う。
(無視だ……相手にするな……相手に……)
と、必死になってセンをシカトし続けようとするラス。
そんな彼の心境を知ってか知らずか、
センは、さらに続けて、
「え? その程度のこともわからないの? マジでか。このクラス、やべぇな。やる気以外はゼロかよ。『頑張ること』だけに価値を見出していて、結果をないがしろにしているタイプか? 残念無双にもほどがあるだろ、まったく」
自覚があるのか無自覚なのか、その辺はちょいと不明だが、
しかし、何はともあれ、煽り性能が異常に高すぎる閃光。
センは続けて、
「俺は、ここに、『小学生に掛け算を教えるつもり』できたんだが……どうやら、『幼稚園児に数字を教える』という授業になりそうだ……マジかぁ……俺、学校の教師をやるつもりだったんだけど……実態は、保育士だったかぁ……しんどいなぁ……」




