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68話 死にたくない。


 68話 死にたくない。


「まだ、俺は、何も極めちゃいない。けど、『ここまでに至る道程』の中で、いくつか見えてきた風景がなくもない。その片鱗を、少しだけ見せてやるよ。何か、一つでも、つかみとってみろ。できなきゃ殺す」


「こ、ころ……やめっ……ゆるっ」


「この場において、言葉は意味をもたねぇ。生き残りたかったら、俺の授業に命がけで取り組め。魂を煮詰めた本気の本気で、俺の『教え』と向きあえ。これから、俺は、恐ろしく難しいことをお前に叩き込む。難しすぎるから、おそらく、何も理解できないだろう。……もし、何もつかみ取れなかったら死ぬ。難しすぎるテストをクリアしなければ死ぬ。そんな極限状態を前にして、お前がどうなるのか……成長するのか、それとも、ただ不安に押しつぶされて心が壊れるのか」


「……」


「楽しみだな。教育と実験の最大公約数。本音を言えば『世界一受けたくない授業』……はじまり、はじまり」


 そこから、センは、

 徹底的に、

 ハロの体へ『教え』を刻み込んだ。

 基本的にはただの暴力。

 どうしようもないほどの痛みの中で、

 ハロは、


(死にたくない……死にたくない……っ!)


 必死になって、何かを掴もうとした。

 『言葉』に意味がないことは、これまでのセンの言動で理解できている。

 この悪魔のような教師は、どれだけ必死に救いを求めたとしても、

 絶対に耳をかしてくれない。

 生き残りたかったら、この授業の中で、『何か』を掴みとるしかない。


「ひぃ、ひぃいい!」


 必死になって、全力で、魂をすり減らして、

 どうにか、何かをつかみ取ろうと必死。

 けれど、


「……………………む、無理……です……」


 つかみ取ろうと必死になってセンの武と向き合った。

 その果てに理解できたことは、

 目の前にいる魔人があまりにも遠いところにいるってことだけだった。

 次元が違った。

 存在値もそうだが、なにより、戦闘力が別次元。

 ハロは、


「あなたは……強すぎる……その戦闘力……おそらく、存在値が同じでも……俺は、あなたの足元にも及ばない。俺が、仮に、あなたの倍の存在値を持っていたとしても……たぶん、赤子のようにひねられる。俺が何人いても……あなたには敵わない……あなたの武を前にすれば、俺はただの虫ケラ……俺は何もつかめない……つかめるわけがない……何かを掴められるほどの領域に……俺はいない……」


 泣きながら、自分の弱さを語るハロに、

 センは、ニっと、軽めの笑顔を向けて、


「合格だ。ハロ。お前は、最初の真理をつかみ取った」


「……え」


※※「合格は流石に言い過ぎか。けど、まあ、仮免ぐらいはくれてやる。――『てめぇじゃ何もつかめねぇ』――その真理に届いた者は、最初の壁を超えられる……その権利を得る。可能性の前に立てる。もし、今後、長い鍛錬の果てに、お前が、最初の壁を超えたら、その時には……明確に、合格の判を押してやる」



 そう言いながら、センは、

 さらなる武を構えて、


「さあ、ハロ。立て。まだまだ、俺のハンマーセッションは始まったばかりだ。俺の授業は、頭がおかしい。50分や90分で終わるようなヌルい代物じゃない。やると決めたら、とことんやるのが俺の流儀。というわけで……さあ、地獄を見ようか」


 悪魔のような顔で、

 ハロをボコボコにしていく閃光。

 終わらない反復練習。

 キチ〇イのように、繰り返す、繰り返す、繰り返す。

 ……『そうでなければ届かない世界がある』と知っているから。

 仮に、自分が、他者に『教えられること』があるとしたら、これだけだから。

 だから、センは、徹底的に、

 この世で最も辛い、

 ――『地味な反復練習』を、『キチ〇イ』のように延々とこなす――

 という、最強の苦行を、ハロに押し付ける。


「ひぃい! ひぃいいい!」



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