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62話 過保護。


 62話 過保護。


「あんまり、そういうことはしない方がいいんじゃないかな? だって、セン先生って、『クロッカ様に気に入られている配下』なんでしょ? そういう立場にいる人に、わざわざケンカを売ったりして……不利益にしかならないと思うよ。本当にやめた方がよくない?」


 極めて常識的であり、かつ、冷静な損得勘定もできる、根本の人間性が高性能な女性。

 それが、彼女、リノである。

 ……そんな彼女の冷静で真っ当な意見を前にして、

 眼鏡担当のラスが、やれやれと、首を横にふりながら、


「魔人ごときを本気で重視する龍神族なんていませんよ。多少、気に入られているのは事実でしょうけれど、それ以上ではないと思いますよ。……クロッカ様に、言いつけることは出来るかもしれませんが、だからといって、クロッカ様が、僕らに何かするなどありえませんよ」


 と、勝手な希望的観測でものを言うラス。

 リノは首をかしげながら、


「そう……かなぁ……」


 と、ラス的には『煮え切れないだけの態度』を見せてくる彼女に、

 ラスは、冷めた顔で、


「別に、強制しませんよ。あの魔人に媚びを売りたかったら、御勝手にどうぞ。ただ、そんなあなたの姿を、とことん冷めた目で見る事にはなりますけどね。それだけは覚悟しておいてください。……強制はしませんが……一応言っておきます。協調性とかって、社会においては非常に大事ですよ」


「……」


 ★


 本日の業務をすべて終えたセン。

 『まともに教師をする気はない』……と言いながら、しかし、『根がマジメさん』なセンエースは、与えられた『教師としての業務』をすべて丁寧にこなした。

 その業務の中には、『嫌がらせ』のような物量の仕事もあったのだが、基本スペックの次元がバグっているセンさんにとって、多少のいやがらせなど屁でもない。


「さあ、帰ろう。今日は疲れたなぁ……個人的な見解としては、何もしとらんのとほぼ一緒だから、本当は一ミリも疲れちゃいねぇけど」


 などと、支離滅裂にバグったことを言いながら、帰宅するため、廊下を歩いている途中で、

 背後から追従している魔人兄妹の兄の方が、ボソっと、


「セン様。私たちは、これから、セン様が行おうとしている大義に関して、詳細を知っておいた方がよろしいんでしょうか? それとも、無知であった方がよろしいのでしょうか?」


 二人はセンから『大義のため、教師となる。お前らは学生になれ』としか聞かされていない。

 ゆえに、確認のため、そんな質問を投げかけた。

 この魔人兄妹は、センの言動をとがめることはあるが、『大義』に関しては絶対の信頼をしている。

 ゆえに『お前たちは何も知らなくていい』と言われるのであれば、それに従おうとも思っている。


 そんな忠実な配下である二人に対し、

 センは、淡々と、


「お前らは、普通に学生生活を謳歌すればいい。それを邪魔するヤツがいた場合は、ちゃんと報告しろ」


 その命令に対し、妹の方が、険しい顔で、


「セン様。過保護は必要ありません。自分のことは自分でどうにか――」


「お前らを守るという理由以外にも、『誰がどのように、俺達に対して行動を起こすのか』……その辺は正確に把握しておきたい。だから、ちゃんと報告しろ。それを怠るのは、重大な命令違反だ。もし、報告すべき案件を勝手な解釈で抱え込んだ場合、たとえどんな理由があろうと、『俺の本気の命令を意図的に無視した』と認定し、俺はお前らの元から去る。もう二度と会うことはないだろう」


「……」


「俺の抜け目のなさを甘く見るなよ。このぐらいなら黙っていてもバレないだろう……という、そのナメた思考を俺は秒で見抜く。あと、俺の発言は基本的にバグっているが、今の俺の発言だけは完全にガチだ。もし、報告を怠った場合、俺はマジで、お前らの元を去る。これを、俺は、絶対のルールとして、俺の魂の深部に刻む」



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