61話 鬼のシカト大作戦。
61話 鬼のシカト大作戦。
「あの兄貴のほうはどうでもいいけど、妹の方はそれなりに可愛かったから、おれとしては別に文句はねぇけどなぁ。むしろ、ラッキー」
その発言に、ラスが目を丸くして、
「え……マトさん、あなた……魔人が相手でも大丈夫な方なんですか? ……か、変わってますねぇ……僕だったら、魔人の相手とか、死んでも嫌ですが、気持ち悪い」
ラスからすれば『犬とセ〇クスできます』と言われたみたいなもの。
そのぐらい、ラスの中では、魔人に対する差別意識が強い。
「おれは、別に、魔人も人間も、そんな差がないと思ってっかんねぇ」
「かわった思想ですねぇ……」
「だって、肌の色ぐらいしか違いねぇじゃん。あとは魔人の方が、平均的に魔力が多いってぐらいの差しかないぜ。おれからすれば、なんで、そんな差があるように思ってんのか不思議な感じなんだけど?」
上流階級の中では、魔人差別は根深く浸透しているが、
中流以下の世界においては、そこまで、差別思想が強いという傾向はない。
もちろん、差別はあるのだが、上流階級と比べれば、明確な温度差がある。
「魔人は、元々モンスターであり、人間ではありません。遺伝子に問題が起きた異常個体……人間の形をして、人間のふりができるだけで、中身はモンスター。人間っぽいのは事実なので、人間の道具として利用されていますが、あくまでも、元モンスター、人間の道具であって、人間と対等に見るべきではありません」
「……おれは、そうは思わないけどなぁ……」
※※「なぜですか? 根拠を言ってください。その結論に至った明確な根拠を、筋道たてて、丁寧に」
「根拠もクソもねぇけど? そう思うってだけ」
「話になりませんね」
と、タメ息をつくラス。
一度、頭をポリポリとかく。
そこで、ムードメーカー担当のヤンが、
「俺も、さすがに、魔人と人間が『大差ない』とは思わねぇけどなぁ。あいつらが野蛮で、『管理をしていないとやべぇ生き物だ』って話はよく聞くし」
「まさに、その通りですよ、ヤンさん。人間と魔人は違います。生まれからして全く別の生き物なのです」
と、ハッキリ言いきってから、
「皆さんに提案なのですが……全員で、あの魔人三人組を完全に無視するという形で、この学校から排斥しませんか?」
そこで、ポニテ担当のリノが、
「それは、セン先生が、『クラスルール的になし』って言ってなかった?」
「あの魔人の言うことを聞く気なんかない……ということを示すためにも、全員で、あの魔人の『すべて』を無視していくんですよ。何を言われても完全に無視。あの魔人たちは『いないもの』として考えるんです」
その提案に、ヤンが、
「俺は賛成。あのセンとかいう魔人、なんか調子に乗っててウゼェし。仮に、あいつが魔人でなく、普通の人間だったとしても、かなりウゼェ」
続けてレクが、
「あたしも賛成。なんか面白そうだから。全員からシカトされたら、あの変態なんていうかな? 泣いたりとかしたらおもろいけど、きゃはは。あ、ハプはどうする? 聞くまでもないか。あんたも、もちろん、シカトするよね?」
そう声をかけられた、内気担当のハプが、
「あ……うん……」
今回の件に関しては、別に、ハプ的にも、反対意見はなかったが、
仮に、反対意見があったとしても、
レクに『そうだよな?』と言われたら『うん』としか言えない女子。
それが、彼女、内気担当のハプ。
クラス全体が、センをシカトする方向で固まっていく中、
『ポニテ常識人』担当のリノが、
「あんまり、そういうことはしない方がいいんじゃないかな? だって、セン先生って、『クロッカ様に気に入られている配下』なんでしょ? そういう立場にいる人に、わざわざケンカを売ったりして……不利益にしかならないと思うよ。本当にやめた方がよくない?」




