59話 クラス会議。
59話 クラス会議。
「……なぜ、クロッカ様が、あなたのような、テキトーな人を、教師に選んだのか、理解に苦しみます。あなたには教師の適性がない」
「それは違うな」
「自分には適正があると? 本気で言っています? ご自身の、ここまでの発言を振り返って、それでも、自分に教師の適正があると、本気で――」
「俺という概念の中に『適正があること』など一つもない。教師だけじゃなく、全てにおいて、俺は適正がない」
「……は?」
「俺には才能がない。何にも向いていない。何もかも平均以下で、なんの取り柄も才能もない。強いていうなら、根気だけは人並み以上だが、それだって、別に、脳のどっかが壊れているってだけ。ようするに、俺はやべぇ無能ってことだ。そんな俺を担任として迎えないといけないお前らには同情するが……かといって、俺は俺であることをやめない。てめぇの不幸を、ただ恨め」
「……最悪ですね……ほんと……」
★
記念すべき第一回目のホームルームが終わり、
センと魔人兄妹の三人が教室を出たところで、
3組の学生たちは、教室の中央に集まって、
みんなで、会議を開始した。
「なんだか、おかしなことになったな。どうするよ、これ。魔人が教師とか、それだけでもめちゃくちゃなのに、あの教師、マジでやべぇよ。ほんと、頭おかしい」
と、クラスの『チャラ男ムードメーカー』担当の『ヤン』が、ペラペラと、
「俺、魔人の知り合いが何人かいるけど、魔人って、マジで、あんなんじゃないからな。普通は、もっと腰が低いし、普通に常識的だから。あのセンって教師の頭がおかしいだけだから」
そのセリフに対して、眼鏡担当のラスが、
「僕も、魔人とは、比較的おとなしい生物だと聞いていたので、先ほどのアレを見て、驚きましたよ。まさか、あんなふざけた魔人がいるとは思ってもいませんでした……しかも、それが、担任ときている。最悪ですよ。本当に……3組に配置されてしまっただけでも自殺ものだというのに、まさか、あんなのが担任になるとは……まったく……本当に、まったく……」
ラスは、一応、貴族の出であり、貴族出身者は、高性能であることが多いので、基本的には1組に配属される。
しかし、才能があまりないラスは、ギリギリのところで、2組からもこぼれて、3組に配属されてしまった。
そのことを、心底から恥じている。
そんな彼にとって、魔人が担任になるというのは、泣きっ面にハチ。
みっともなくて、誰にも言えないレベル。
……と、そこで、クラスのギャルリーダー的ポジションの『レク』が、
「てかさ、あのセンコー、クロッカ様の犬とか言っていたけど、あれ、ブラフじゃね? 龍神族が、魔人を犬にするとかなくない? しかも、あんな変なのを」
そのセリフに対し、ラスが、
「いや、あの魔人がクロッカ様の犬だというのは事実だと思いますよ、レクさん」
「え、なんでー?」
「あの魔人が言っていたように……『そのぐらいの特別な存在』でもなければ、この学校で教師をすることなど、不可能だからです。この学校で魔人が教師をしようと思えば……龍神族にムリヤリねじ込んでもらう以外に方法はありません。なんせ、この学校の理事は、魔人嫌いで有名な、十七眷属のエトマス様ですから」
※※「えー、エトマス様って魔人が嫌いなの?」
「レクさん……あなたは、本当に、何も知りませんね」
「世間とか知らんし、勉強とかも興味ないから。当然、何も知らんけど?」
と、自慢げにピースサインを出しながら、そう宣言するレクに、
ラスは、タメ息交じりに、
「あなたと同じクラスだというだけで、身が引き裂けそうなほど恥ずかしいですよ」
「はは。ラスって、ほんと、口と性格が悪いよねぇ」




