58話 クラスルール。
58話 クラスルール。
「どういう処分が出るか楽しみにしておけ。クロッカ様は、お前らが思っている以上に、『シッポの振り方がうまい俺(犬 )』 を気に入っているからな。わかったか、人間ども」
という命令に対し、
眼鏡担当のラスが、センに対して、さげすんだ視線を送りながら、
「申し訳ありませんが、魔人と仲良くするというのは無理ですね。根本的に、立場が違う相手と対等に接することも不可能です。そんな僕の思想が気に食わないのであれば、どうぞ、上に泣きついてください。どんな対応になろうと、僕は意見をかえませんので」
と、そんなことを言ってきた。
それに対し、センは、
「おまえは、ずっと、勝手な誤解をし続けてんなぁ。なんで、そんな思想になるのか意味不明で逆に面白いレベルだ」
「はぁ?」
「誰も仲良くしろとは言ってねぇ。てか、俺、嫌いなんだよ、『みんな仲良くしなさい』とかいう教師。マジで、昔から、ヘドが出るほど大嫌い。だから、俺は、絶対、お前らに対し、みんな仲良くしろとか言わない。嫌いなやつのことは嫌いでいい。合わないやつと仲良くする必要はない。ただ、『気に入らないから』という理由だけで、いやがらせしたり、足を引っ張ったりはすんな。シカトまでは許容してやる。嫌いなやつのことはシカトしろ。ただし、周りは巻き込むな。てめぇで勝手にシカトしろ。周りを巻き込んで、『あいつのことをシカトしよう』とか言い出すのは、ゴリゴリの迷惑行動だから、まったくもって話が別だ。そういうムーブがクラス内で行われていると感知したと同時に、適切な処理をさせてもらう。具体的に言うと、関係者全員もれなく地獄送り。……合わない相手をシカトするのは許すが、周りを巻き込むのはだめ。それがこのクラスのルールだ。少なくとも、俺が教師をやっている間は、このクラスにおける絶対のルール。やぶったやつは地獄行き……具体的には、先生に言いつけるから、そのつもりで」
「……先生はあなたではないのですか?」
というラスの冷静なツッコミに対し、
「俺が言う先生ってのは、『上の立場の人間』って意味だ。つまり、クロッカ様だな。お前ら、俺が決めたクラスルールを破るなよ。破ったやつは、クロッカ様にいいつけて、斬首してもらうからな」
「……それ、本気で言っているのですか?」
「本気なワケないだろ。ただのファントムトークに、いちいち、ガチの反応すんじゃねぇよ、めんどくせぇな。俺の言葉は、八割がた、シカトしろ。まともに受け取るのは、クラスルールぐらいでいい」
「えっと、つまり、どっちなんですか? あなたの言葉は八割が嘘……けれど、『クラスルール』は、残りの二割であり本当のこと……ということは、破った場合、本当に斬首されるということですか?」
「ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ、屁理屈たれやがって、クソ眼鏡が。そんなに俺とおしゃべりしてぇのか?」
「命にかかわる大事なことなので、正式に確認しているだけです。あなたのような頭のおかしい魔人とは、本来なら、一秒たりとも会話したくありません」
「奇遇だな、俺もだ。俺は、インテリ野郎が嫌いだ。頭のいいやつを見ると虫唾が走る。お前の頭がいいかどうかは興味がねぇから一ミリもしらねぇが、なんか頭よさそうでムカつく。というわけで、クラスルールにのっとってシカトさせてもらう。他のやつは俺に追従しなくていいぞ。それをすると、ルール違反でクロッカ様に告げ口されるからな……あれ……でも、この場合、告げ口するのは誰だろう……」
と、軽やかなファントムトークが止まらないセン。
そんな、ヤバすぎるグレートティーチャー・センエースに対して、
不快感と不信感が止まらないラスは、苦虫をかみつぶした顔で、
「……なぜ、クロッカ様が、あなたのような、テキトーな人を、教師に選んだのか、理解に苦しみます。あなたには教師の適性がない」
「それは違うな」




