表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/224

50話 罪。


 50話 罪。


 エトマスにとって、魔人とは、文字通り、『極めて下等な生命体』であり、生きる価値のないもの。十七眷属や龍神族という上位種が、寛大な心で、生存を認めているから、なんとか生きることが許されている虫けら。


 それなのに……それだというのに、その目はなんだ?

 なぜ、上位者のような目で、私を射貫く?

 ありえない、ありえない、ありえない……

 エトマスの感情が膨らんでいく。

 センの顔を見るまでは、センに対して、

 ちゃんと、

 『クロッカの犬』として接するつもりだった。

 クロッカの犬なのだから、無茶をしてはいけない。

 しつけで殴るのはいいが、殺したり、追い出したりしてはいけない。

 本気で、ちゃんと、理解していた。

 しかし、センの強い目に射貫かれたことで、

 理性がぶっ壊れる。

 今のエトマスは、普通に、本気で、打算なく、

 センエースという魔人に対して、激しい怒りと憤りを感じている。


「その目をやめろぉおおおおお!!」


 ついには、体裁も失う勢いでブチぎれる。


 ここまで切れるということは、これまでの人生で一度もなかった。

 マス会の姉妹に、イライラすることはよくあるが、

 それは、十分に許容範囲内の怒り。

 なぜなら、マス会の面々は、最低限の敬意を示してくれているから。

 なんだかんだ、見下されてはいるものの、

 同じ十七眷属として、認めてはもらえているから。

 だから、多少の嫌味や軽いパワハラを受けたとしても、

 『まあ、別にいいけれど』という視点で流すことができた。

 しかし、センに対して、その寛容さは皆無。

 ただただ腹立つ。

 そして、それが暴走し、爆発した。

 結果、


「殺すぅうううううううううううううう!!」


 本気の殺意が膨れ上がった。

 魔力とオーラが膨らんで、

 右手が研ぎ澄まされていく。

 手刀を、『そこらの刃物を遥かに凌駕する鋭利さ』に整えてから、

 センの腹部を貫かんと、グイっと、差し出した。

 エトマスの手刀は、センの腹部にズブリとぶっ刺さる。

 明確に内臓を裂いていく感覚。

 きらいな人間の肉を裂く恍惚。

 その愉悦の中で、

 エトマスは、


(あっ……しまっ……やりすぎ……っ)


 ちょっとだけ冷静になった。

 暴走した感情が、愉悦によって少しだけ、フラットなソレへと引き戻される。

 ヌルリとしたセンの血を感じながら、

 『さすがにやりすぎた』と反省しているエトマス。

 そんな彼女に、

 センは、


「……ふ、ふふ……さすがに、これは……やりすぎだろ……」


 と、いまだ、強い目を崩さずに、そんなナメたことを言ってきた。

 だから、エトマスの脳に、また火がついて、


「……十七眷属を愚弄したクズにお仕置きをした。それだけの話だ。私には、十七眷属を愚弄したクズを叩きのめす権利がある。いや、その義務がある。貴様の態度を放置することこそが、十七眷属の罪! 猛省せよ!」


 と、身勝手なことを叫ぶエトマスに、

 センは、


(クックック……)


 と、腹の中で不敵に笑い、

 より強い目を彼女に向ける。

 センは、心の中で、


(感情のコントロールが下手な差別主義者……それも、とびっきりの。クロッカから、『俺には無茶をするな』と言われているはずなのに、それでも、我慢できずに、俺に対してここまでやるバカ。……ウワサどおり、おそらく、これまでに、魔人相手に、散々なことをやってきたんだろう……)


 『彼女がやばい』という噂は耳にしていた。

 事実、エトマスは、これまでに、魔人に対して非道なことを山ほどやってきている。

 『センの強すぎる眼光に根源的な恐怖を抱いてしまった』というのも、もちろん、ここまで暴れてしまった理由の一つなのだが、それ以上に、彼女の本質というものが、この結果を引き起こした最大の原因。

 彼女は比較的理性的な女。

 ようするには、理性的に外道なことが出来るタイプ。


(とことん教えてやるぜ……てめぇの罪を)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ