48話 謝罪を要求する。
48話 謝罪を要求する。
「……いきなりの暴力等は、さすがに不愉快なので、クロッカ様に報告して、色々と対処してもらったりとかすることにもなりますけど、大丈夫そうですか?」
「私の主人はパルカ様。クロッカ様に何かを言われる筋合いはなし。そもそも、あなたをここの学院にねじ込むというワガママを聞いてあげている時点で、すでに、十七眷属としての責務は果たしている。それ以上のワガママは聞かない。その義務はない。もし、まだ、過剰なワガママを口にするようであれば、私は、直属の上司であるパルカ様に、そのワガママに対する不満を告げさせてもらう」
「……」
「まさかとは思うけれど、自分の方が優位な立場にあるとでも? ただの下賤な魔人風情が思い上がったものね。理解しておきなさい。私がその気になれば、あなた程度は、一瞬でチリになるということを」
「……」
「最初にハッキリと、あなたに対する私の感想を告げておくわ。……あなたは態度が悪すぎる。自分の方が『圧倒的に立場が下である』と、そんな当たり前の事実を理解することすらできないようならば……」
そこで、エトマスは、また、パチンと指をならした。
すると、世界が真っ白な空間で包まれる。
センとエトマス、二人だけの世界。
限定空間を使われたと認識したと同時、
センは魔法の鎖で拘束される。
身動きが取れなくなったセンに、
エトマスは、初めて、視線を向けて、
「……オンドリューの話は聞いている。彼を脅しつけたそうね。本当に、立場というものが、まったく理解できていない」
「……脅しつけたなんて、そんな、人聞きの悪い。『傷ついた体をなおすためには、安静にしておくのがベストだ』という、当たり前の助言をさせていただいただけですよ」
「おそろしいぐらい……ずいぶんと調子にのっている……気に食わない顔……仮に魔人でなくとも、おそらく、私は、あなたに嫌悪感を抱いていたでしょう」
「あなたのような女性からは、よく、そう言われますねぇ」
「あなたのような女性? とんでもなくナメた口の利き方をしてくれるわね。クロッカ様は、犬のしつけがまったくなっていないご様子。……ちなみに、一応、聞いておいてあげようかしら。私のような女性とはどういうことを言うのかしら?」
「ヒステリー持ちで高慢で、相手を支配したがる女性です」
「……十七眷属であり、この学院の支配者である私を……よく、そこまで愚弄できるわね……」
「愚弄? 真実を述べただけですが? それとも、俺の評価が違うというのですか? この状況、わかってます? 俺、なんも悪いことしてないってのに、めちゃくちゃヒステリックにハンマーで殴られて、鎖でしばられているんですけど? この状況で、あなたに対し、ヒステリー以外の評価を送るのは、流石に、いささか難しいと思うのですが」
「クロッカ様の犬だからといって……十七眷属をなめていいわけではない。その程度も分からない、知性貧弱なクソ猿が……」
そう言いながら、
エトマスは、右腕にオーラと魔力を込めながら、
ゆっくりと、センの目の前まで歩いてきて、
魔法の鎖で動けなくなっているセンの顔面に、
ガツンッと、一発をぶち込んだ。
「立場の差をわきまえて、私に正式に謝罪しなさい」
「謝罪? なんもわるいことしてないのに?」
「態度が悪すぎる。私の前では、厳かに、静粛に、徹底して敬意をしめしなさい。私は十七眷属の一人にして、歴史あるダソルビア魔術学院の理事エトマス。あなたのような下等な魔人にナメた態度をとられる筋合いは微塵もない」
「プライドの塊っすねぇ……何がそんなに気に入らないのか知りませんが……まあ、はいはい、わかりました。大人になってあげますよ。どうも、すいませーん」




