47話 イカれた兄妹を紹介したぜ。
47話 イカれた兄妹を紹介したぜ。
「かしこまりました。それでは、またあとで、じっくりと話し合うことにいたしましょう。ちなみに、これは、その場しのぎの口約束やなく、絶対の契約ですから、その辺、誤解なきよう」
そこで、センは、心底しんどそうな顔をジバに向ける。
「……お前の妹、おかしいぞ。何がどうとは言えんけど……いや、この件に関しては言えるな。だって、普通におかしいもん。他者に多くを求め過ぎる。これは、ダメだよ。こういう思想は破滅を招くよ。ちなみに、この場合に破滅するのは俺ね。だから、助けてジバえもん。このビシャミちゃんに、一発、ガツンと、兄の威厳とやらをかましたれ。俺が許す」
と、素直な言葉をぶつけると、
ジバは、苦笑いして、
「ビシャのあなた様への要求……私は、それほどおかしくないと思いますよ、セン様。確かに、少々、のめりこみすぎる傾向にはある妹ですが……言っていることは、何も間違っていないと思います。セン様は、尊い方なのですから、言動も含めて、なにもかも、正しく尊くあってほしい……それだけの話だと思います」
「……はぁ……助けるんじゃなかった、マジで……こんなイカれた兄妹だと知っていたら……はぁ……」
★
――その後、手続き等、色々を経て、
センとその配下の兄妹、合計3人の魔人は、
この、ダソルビア魔術学院の理事の元に挨拶に行くことになった。
長い廊下を歩いた果てに辿り着いた『理事長室の扉』は、無駄に大きく、
その荘厳さに、根が小心者のジバは、普通に圧倒された。
気合いの入り方が違うビシャは、スンとすまし顔。
……そんな二人の顔を見比べつつ、
(同じ血が流れていても、性格ってのは、全然違うもんだよなぁ……俺は兄弟がいないから知らんけど……もし、仮に、兄弟がいたら……全然違う性格になっていたのかなぁ……それとも、ちょっとは似るのかな? ……似ている兄妹とかいたら、終わっていただろうなぁ……俺みたいなのが二人もいたら、世界が耐えられんだろう。どう耐えられんか知らんけど……)
などと、糞どうでもいいファントムトークを内心で垂れ流しながら、
センは、その荘厳な扉をノックする。
大きめのノックをしてから、数秒後に、
「入りなさい」
という、とんでもなく偉そうな声が聞こえてきた。
センは、
「はいりまーす」
という軽いノリで、扉をあけて中に入る。
理事長室の奥、
机に腰をかけて、何やら書類にサインをしたり、判を押したりと、色々、お仕事をしている様子の理事。
センたちの方には一切視線を向けず、
書類と向き合ったまま、
「……この理事長室に入る時は……」
ボソっと、前提を口にしてから、
パチンと指を鳴らす。
すると、センの頭部に、
ガツンッッと、
魔法のハンマーが振り下ろされた。
「うぉおっ、痛ったぁああああああああっ!!」
と、魔法のハンマーで殴られてタンコブが出来ている頭を両手でさすっているセンに、エトマス理事長は、冷たい口調で、
「全身全霊の敬意を払いなさい」
と、そんな言葉を投げかけてくる。
いまだに、一度も、センたちの方に視線を向けてはいない。
センは頭をさすりながら、
(マジか、このオバハン……殺したろか、オバハン……ナメんなよ、オバハン)
心の中で、何度か宣戦布告してから、
「……い、一応、言っておきますけど、俺は、クロッカ様の配下ですよ」
「それが何?」
「……いきなりの暴力等は、さすがに不愉快なので、クロッカ様に報告して、色々と対処してもらったりとかすることにもなりますけど、大丈夫そうですか?」




