45話 心酔。
45話 心酔。
彼女は、隠した爪を、『これでもか』と磨きに磨き、虎視眈々と、兄を救うチャンスを狙っていた。
ビシャは、大きく成長し、かなりの力を手に入れた。
だが、まだ、世界を変えられるレベルではない。
現状だと、どうあがいても、龍神族に一矢報いることはできない。
『将来的には分からない』と言えるぐらいの才能が、彼女にはあるが、まだまだ発展途上。
兄を救い、世界を変えるには……さすがに、実力が足りない。
ビシャは相当な実力者に成長したが、
しかし、十七眷属の中には、彼女よりも明確に強い者が二人いる。
また、十七眷属は、全員有能であり、その有能な連中が複数人で束になってかかってきた場合、ビシャ単騎ではどうしようもない。
ビシャは、ゼノの中で、それなりの地位に至ったが、しかし、ゼノのメンツを自由に動かすことなどは出来ないし、ゼノのメンツは、みな、『カドヒトが示した世界攻略メインミッションのフローチャート』にしたがって、RTA勢ばりの勢いで、がむしゃらに行動しているため、サブミッションを依頼することなど出来ない。
また、リーダーのカドヒトは多忙で、じっくりと相談することもままならない。
※※そもそも、ゼノに入団する際『兄を救いたい』と願った彼女に、カドヒトは、『それは、お前が強くなって果たせ。俺は個ではなく、全体を救うために戦っている』と言われていることもあり、『ゼノに頼る』ということはできなかった。
ビシャは、兄を救うためには、『自分が全てを変えられるぐらい強くなるしかない』と心に決め、歯を食いしばって、厳しい訓練に耐えた。
イジメられている兄を尻目に、歯を食いしばって、牙と爪を磨き続けた。
兄 は有能で、かつ、従順であったため、しばらくは大丈夫だろうとタカをくくっていた。
十七眷属は、外道が多いのも事実だが、頭のいい連中ばかりなので、『わざわざ、有能なジバ』を壊すことはないだろうと思っていた。
兄に守られて生きてきたビシャは、『人の醜さ』を、どこかでナメていた。
結果、ジバは、『キレたナイフ、オンドリュー』という、理不尽の前で絶望を味わう羽目になった。
そんな兄を救ってくれた王、センエースに、
ビシャは心酔することになる。
……ビシャも、本当は、誰かに救ってほしかった。
兄を救うために、必死になって自分を磨き続けたが、しかし、今の存在値に至った段階で伸び悩んでしまったから。
壁を超えようと、歯を食いしばったが、しかし、才能の壁なのか何なのか、どうしても、なかなか、今以上に強くなることができなかった。
閉塞状態に陥って、どうしよう、どうしようと悩み、もがき、苦しんで、
けれど、誰も助けてくれない、誰にも救いを求められない……
そんな中、センエースは、兄を救ってくれた。
そして、当然のように、自分も引き上げてくれた。
その上で、『高み』を魅せつけられ、
そして、
『俺は、この世界に革命を起こすことにした。この世界の面倒事は、この世界の人間で解決すればいいじゃない……と思っていた時期が俺にもありました。けど、あまりに胸糞すぎて、いいかげん、イラついたから、現状の支配構造を全部ブチ壊して、混沌の未来を創り上げることに決めたのだ。ふはーははは。……あ、ちなみに言っておくと、カドヒトは、俺のオーラドールだ。完全自律型で運用していたオーラドールで、あいつ一人でも、どうにかなるかなぁと思ったんだが……あいつ単騎だと、支配構造の完全破壊まで時間がかかりすぎるし、この世界の人間が、想像以上に糞過ぎたから、俺自身が動くことに決めた。カドヒトが創った邪教団ゼノは、俺が動く上で、いい感じの役割が出来そうだから、もう、このまま今まで通りに運用させる。俺は、龍神族サイドの獅子身中の虫として動く。お前らは、そんな俺の配下として、いい感じに利用させてもらう。わかったかね』
欲しい言葉をくれた。




