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24話 そんなことは、みんなわかっている。


 24話 そんなことは、みんなわかっている。


「というわけで、もうちょっとだけ耐えてください。もうそろそろ、この呪縛をといて、助けにいけそうなんで。俺、頑張ってるんで。やってやる気満々なんで。ふんぬぅううううう(棒 )」


 センがそんなふざけたことを言っている間も、

 カドヒトの手は一切、止まっていなかった。

 徹底的に、オンドリューに暴行を加えていく。

 殺しかけては回復して、

 というのを、延々に繰り返した果てに、

 オンドリューが、


「やめ……たすけ……もう……耐えられ……」


 と、『プライドを失った弱者の救い』を求めだしたので、

 そこで、カドヒトは、


「……『覚悟の決まっていない配下連中』が、ソレを口にするのは、まあ、まだ、可愛げがあってみっともないだけだが……お前がそれを口にすると、だいぶ寒いな」


 そう言いながら、高位の回復魔法を使い、ある程度、普通に喋れるようにしてから、


 オンドリューの前髪を掴んで、グンっと持ちあげ、目と目があうようにすると、


「お前は、最高位の悪党なんだからよぉ……せめて、その自覚と誇りだけは胸にきっちりと抱いていようぜ。それすら失ったら、そのあと、お前に何が残るんだよ。え? 言ってみろよ、お?」


「お願いします……助けてください……死にたくない……」


「死にたいやつの方が少ないから、そりゃそうだろうなぁ」


 そう言いながら、カドヒトは、

 毒ナイフの腹を、オンドリューの頬に、ヒタヒタと何度かあてて、


「そんなことは、みんなわかっている。みんなそう。痛みはいやだ。幸せだけ欲しい。暖かい幸せ……家族とか、恋人とか……そういう暖かくて、平和で、優しくて……それでいいだろ。自分にとって大事な誰かと、当たり前の静かな日々を平穏に、平和に、豊かに、自由に、幸せに暮らす……それでいいだろうが……」


「……」


「なんで、それを壊す? わざわざ、他者のソレを……踏みにじって、痛みを与えて、台無しにして、胸糞を量産して……なんで、そんなことをする必要がある? なあ、教えてくれよ。なんでだ?」


 その問いに対して、オンドリューは何も言えない。

 本音を言えば、殴られてしまうから、何も言えない。

 とはいえ、嘘をつこうにも、どんな嘘をつけばいいのか分からない。

 だから、結果として黙るしかなくなる。

 そんな彼に対して、

 カドヒトは、


「快楽のためだろ? いじめが楽しいって感情も、分からなくはないさ。だから、そこの部分の説明は必要ねぇ。俺だって、有名人の破局報道にはココロ踊るし、アンコール沸かすぜ。嗜虐心に浸って、他者の痛みに甘美を覚える……わからなくはない……わからなくはないが……普通はブレーキがかかるだろうよ。今の俺みたいによぉ。俺、だいぶ、自分にブレーキかけてるぜ。本当だったら、顔見た瞬間に、お前を殺しているぐらい……俺はお前にイラついてんだよ」


 そう言いながら、ギリギリと、ゆっくり、

 ナイフの刃を、オンドリューの顔面に食い込ませていく。


「山の奥で、ただ平穏に生きていただけの魔人の家族を襲い、父親を殺し、母親と妹を犯し、殺し、その肉を食わせたことがあるそうだな……そこまでしないと満たされない欲ってのは本当にあるのか? なぁ、オンドリューさんよぉ」


 声のとげとげしさが増していく。

 膨らんでいく、カドヒトの中の憎悪。


「イケメンや美女や金持ちが没落したってニュースで『やったぜ』と拳を突き上げたことがある俺は、決して聖人じゃねぇ。だから、他人に対して、『聖人級の高潔さ』を求めたりはしねぇ……けどよぉ……俺の悪意ってのはそこまでだ。没落した美形や金持ちに、石を投げようとはおもわねぇ。『ざまぁみさらせ』と思うことはあっても、『もっと苦しめ。とことん地獄を見て死ね』……とかは思わねぇ。ましてや、それを、この手でやろうなんて思わねぇ。それが普通だろ? 『そこまで』で『ブレーキがかかる』のが普通の感性だろ? なんで、てめぇは、その普通で満足できない? なぜ普通でいられない? なぁ、なんでだ?」



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