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234話 記憶に干渉するのは難しい。


 234話 記憶に干渉するのは難しい。


 ヒークルの記憶はゴチャっとしていた。

 センを殴ったところまでは結構鮮明なのに、そこから先が不透明。


「……」


 数秒悩んでから、

 ヒークルは、街にいる配下に通信の魔法を繋いで、


「……聞こえるか、リバーディ」


『はっ、ヒークル様。言われた通り、魔人たちを集めております』


「……集める?」


『え、あ、はい。対アンデッド用の道具を増やすため、特別選抜試験を行うから、存在値が高いやつを集めろ……と、お命じになられましたよね。ご命令通り、使えそうな魔人を集めておるのですが……』


「あ、ああ……ああ、そうだな……そうだ……そのはずだ」


『ヒークル様、どうなさいましたか? 声が、その……かすれているご様子ですが……』


「……貧血で倒れてしまった。あのクソアンデッドとの闘いで、思った以上に疲弊してしまったらしい……」


『だ、大丈夫でしょうか?!』


「フラついただけだ。……今から帰るが、魔人どもの相手が出来るほど体力は残っていない。帰ったらすぐに寝るつもりだから、試験はお前の方で進めておけ」


『はっ、かしこまりました!』


 そこで、通信の魔法を切ったヒークルは、

 頭をガシガシとかきむしりながら、


(魔人共を対アンデッド用の道具にする……というのは……確かに……命令したような気がするが……私は、どうして、そんなことを考えた?)


 そこで、チラっと、センを見て、


(この糞犬にイラついたから……同族の魔人に責任を取らせるために……道具として活用……なんだ、その理屈は……筋が通っていない……通っているのか? ……くっ……ダメだ……頭が痛くなってきた……もういい。いったん、帰って休もう)


 と、そんな風に、思考を放棄したヒークルを尻目に、

 センは、


(……消すだけならともかく、記憶操作とか記憶捏造ってムズいんだよなぁ。俺、こういう、繊細な魔力コントロールが必要な魔法、マジで苦手……)


 心の中で、ボソっと、そうつぶやく。

 センは、ヒークルを呪うと同時に、記憶を、部分的にちょこっとだけ操作した。

 本当にちょっとだけしか操作していないのだが、それでも、違和感を与えてしまっている。

 『強大な魔法で豪快に吹っ飛ばす』とかなら、まだうまくやれるが、こういう系統は超苦手。


 ――ヒークルは、自分の記憶に、違和感を覚えつつも、

 とりあえず、その日は、そのまま、街に帰った。


 そして、そのまま、自室に戻り、泥のように眠った。

 ヒークルが完全に寝落ちする寸前、センは、ヒークルに、


「魔人の選別ですけど、俺も試験官としてかかわっていいですか?」


「は? ふざけるな……なぜ、魔人の犬に――」


 と、ヒークルは、当たり前のように不許可にしようとした……が、

 そこで、センは、無詠唱で、催眠の魔法を使う。


「うっ……」


 強烈な睡魔に襲われ、そのまま、気絶するように眠りに入ったヒークルを尻目に、

 もう一度、記憶操作で、『許可した』という記憶に改変してから、


「さて……それじゃあ、またまた、試験官ごっこを開始しようか」


 そう言いながら、選抜試験会場へと向かった。



 ★



 『カラルームの街』の中にある『かなり広めの噴水広場』に、魔人たちが20名ほど、集められていた。

 彼らを管理・監視しているのは、ヒークルの部下である『リバーディ』。

 眼鏡をかけて、少し太っている、30代ぐらいのおっさん。

 存在値は25ぐらい。戦闘要員ではなく、秘書的な役目。ヒークルのスケジュール管理、政策調査、文書作成、会議や行事への代理出席、各種原稿の作成などが主な仕事。

 魔力もオーラも『そこそこ』レベルでしかないが、

 秘書としての能力は、かなり高い。


 リバーディは、ヒークルの命令通り、

 魔人たちの選別を開始していた。



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― 新着の感想 ―
ヒークルが自分の記憶に違和感を覚える描写が、 非常にリアルで読んでいる側までゾクゾクしました。
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