229話 センエースに賭ければ絶対に勝てる。
229話 センエースに賭ければ絶対に勝てる。
センエースに関して、ある程度の『理解』を経た。
パーリナンは、
(……素晴らしい。絶対的な強さを持ちながら、狡猾に周到に陰湿に虎視眈々とチャンスを待つことができる性悪な猛獣。この男なら、出来る。この男は……いずれ、確実に、龍神族を滅ぼし、天帝の地位につく。……怪物としての土台が違う……)
センエースがいずれ王になるであろうことを確信する。
(この男に……センエースについていけば間違いない……)
と、そこで、パーリナンは思う。
(これほど老獪で……誰にも本心を気づかせずに、闇に潜んで、計画を遂行していた男が……どうして、私の前では、いくつかの『秘密』をバラした?)
パーリナンは、ここまで、センに関して、色々と考えたが、
ここで、ついに、
「センエース様」
直接、理由を聞こうと声をかけた。
すると、センは、渋い顔をして、
「王はクロッカだから、俺に様はいらねぇ。……と言いたいところだが……一応は『俺の配下』になるなら、上下関係はちゃんとしねぇといけないか。ジバたちと違って、お前のことは、完全配下にする気はないが、将来的には分からんし……ん、しゃーない。一旦、受け入れよう。……で、なんだ?」
「なぜ、私に……『アンデッドを用いたマッチポンプ作戦』をバラしたのですか? 私たちを生かして利用するというのであれば、その秘密は明かさない方がよかったのでは? その理由を、いくつか考えてみたのですが、私には分かりませんでした。どうか、その真意を教えていただきたい」
「イラっとして、ヒークルを殺しかけちまったから、もう、別にいいやって思っただけだ。特に深い理由とかはねぇ」
「……」
「お前らは、二人とも、正直、大した存在じゃねぇ。情報を隠して、うまいこと利用しようとも考えてはいたが、別にそうじゃなくてもいいかなぁって思っただけ。もちろん、お前ら……特に、お前。パーリナン……情報によると、お前は、オンドリューやヒークルみたいなアホ貴族どもと違い、だいぶ賢いっぽかったからな。やり方次第じゃ、正式に、こっちへ引きずり込むことも出来るんじゃねぇか……と思っただけ。つまりは、所詮、なりゆきだ」
「前提を踏まえた上で、どう転んでもかまわない作戦を立てた、と、そういうわけですね。……何か一つでもミスが起きたら破綻してしまうガチガチの作戦よりも、臨機応変に対応できる柔軟な作戦の方が、最終的な成功率は高くなる。なるほど、やはり、あなたは周到な蛇だ」
「俺が蛇に見えたか、ならお前が蛇なんだ」
と、大好きなテンプレセリフを口にするセンに、
パーリナンは、
「ちなみに、一つおうかがいしたい。今回の作戦で、そのアンデッドを使ったのには、何か特別な理由があるのですか? 今後、あなたの近くで働いていくと決めた以上、思想や理念は、明確に理解しておきたいので、できれば、教えておいていただきたいのですが」
「基本的には、この世界の上級国民の力をそぐためだが……何よりの理由は、この子のストレス解消だ。うちの子は、『この世界で迫害され続けた魔人の怨念の集合体』みたいなもの。だから、元凶である上級国民をボコボコにさせて、少しでも気が晴れるようにしてやっている。カスどもをしばきあげたところで、うちの子の無念が晴れるとは思えないが、まあ、出来ることは全部やるってのが俺の流儀なんでね」
「……」
「俺は俺の大事なものを優先させる。どんな時でもな。それが、俺の理念っちゃ理念だ」
センの『答え』を聞いたパーリナンは、
(……この男、やはり、ただの猛獣ではない)




