228話 俺よりクロッカの方が強い。
228話 俺よりクロッカの方が強い。
そこで、パーリナンが、
「ひ、一つ……聞かせてもらいたい……ぁ、いや……聞かせて頂きたいのですが……」
「なに?」
「あなた……様は……クロッカ様より……強いのでは?」
「いや、俺よりクロッカの方が強いよ。殺し合いをすれば俺が勝つだろうが……魂の強さで言えば、あいつの方が上だと思う。こんなクソみたいな世界で、あれだけの精神的潔癖を抱えていながら、自殺するのではなく、『真っ向から立ち向かう』という判断を下せる、あの強さは……俺にはないもの。俺なら、『こんな世界は滅んでしまえ』と呪い散らかすところだ」
まっすぐな顔で、そんな事をつぶやくセンを尻目に、
パーリナンは、
(クロッカ様を、呼び捨てにして、かつ、『あいつ』呼ばわりか……腹の底ではどう思っているかが透けて見える。殺し合いをすれば勝てるというのは……おそらく事実だろう。ランク11の魔法を使いこなす異常者には、流石のクロッカ様も勝てないだろう。このセンエースという魔人は……あまりにも、次元が違う。おそらく、その存在値は……200に到達している……)
自分で、『その数字』を口にしていながら、
パーリナンは、あまりのバカバカしさに笑った。
(200。ありえない数字だ。……実際に、センエースが、とんでもない魔法を使うところや、あの強大なアンデッドを使役しているところを見ていなければ……とても信じられない値)
『ランク11』の魔法を唱えた……というだけでは、信じられなかったが、
パーリナンは、先ほどの、センとの闘いで、
『センエースの厚み』というものを肌で感じた。
強大なアンデッドを武器として使いこなす胆力、常に堂々とした王者のふるまい。
それら全ての情報から、パーリナンは、センエースの高みを感じ取った。
(……存在値200。それだけの圧倒的な力を持つのであれば、龍神族の方々を討ち倒し、自らが絶対的支配者になっていてしかるべき。少なくとも、私なら、そうする。……わざわざ、自分より弱いクロッカ様の下についているのは……なぜ……)
ここまでの、センの発言等を踏まえて、
パーリナンは、センの思惑を推察しようと、必死に頭を回した。
その結果、パーリナンは、
(存在値200はとんでもない数字だが……龍神族全員を相手にするとなれば、流石に敗北の可能性がある。龍神族の『秘密の宝物庫』には、とんでもなく強力なアイテムが隠されているというウワサ。龍神族が一丸となって、センエースを討伐しようとすると、分が悪い……そう考えたセンエースは、元々、パルカ様やガリオ様のことをよく思っていなかったクロッカ様を懐柔した。そして、現在は、戦力を拡大中。センエースは、魔人を集めているというウワサがあったが、龍神族との最終決戦を見越して、戦力を集めているのか。先ほどのカイがそうだったように、魔人は、現行の貴族に強い恨みを抱いている。一般人よりも魔人を集めた方が、士気の厚みが増す。……なるほど、見えてきた)
これまでのウワサを一つ一つ整理していくと、
煩雑としているように見えて、
実は、一本の筋が通っていることがよくわかった。
(センエースが、クロッカ様の下についているのは、あくまでもカモフラージュ。『戦力集め』をしている現状で、本気の革命作戦を、ガリオ様やパルカ様に気取られるのは悪手とみて、まずは、あえて、クロッカ様の犬というポジションについた。……なんという、狡猾で、慎重で、大胆な一手。これだけの力を持つ者からすれば、他者から犬のように扱われるなど、腸が煮えくり返るほどの屈辱のはず。……しかし、作戦遂行のためなら、どんな屈辱すらも受け入れるという信念と忍耐……)




