227話 デスビーム。
227話 デスビーム。
「ご……む……?」
まったく攻撃がきいていない衝撃と合わさって、困惑が止まらない様子のパーリナン。
そんな彼の涙目の先で、センは、ぽりぽりと頭をかきながら、
「ゴムは剣で切れるか……まあ、俺の言葉に、整合性なんて必要ないがね」
そう言いつつ、
パーリナンの額に人差し指を向けて、
「デスビームっ!」
『ただオーラを圧縮させて、指先から放つ』……という、魔法でも何でもない、ちょっとした小技を使う。
発射されたオーラのビームは、パーリナンの額に直撃。
「ぐわぁあああ!」
センからすれば、デコピンぐらいの一手だったが、
パーリナンは、『ヘビー級のストレートを頂いた』ように感じた。
ヘシ折れたんじゃないかと心配になるほどの衝撃が首にのしかかる。
「ぐっ……うっ……」
センからすればデコピン程度でしかない攻撃を受けて満身創痍のパーリナン。
奥歯をかみしめて、
「カイ!! 悔いのないように、お前の全部を込めて、『爆嵐弾』を放て! 私も、全魔力を込めた一撃を放つ!!」
パーリナンの命令に、カイは、
「はっ!」
と、気合のこもった返事を一つ。
そのまま、両者とも、両手に魔力を丹念に練り上げていく。
そして、
「乱舞・銀星球ランク4!!」
「爆嵐弾ランク4!!」
それぞれが誇る『最高位の魔法』を放った。
命がかかった場面での、全力を賭した一撃。
ゆえに、火力は絶大。
存在値的に同格程度のモンスターなら、一瞬で蒸発するレベルの猛撃。
そんな、最高峰のダブルアタックを受けたセンは、
一旦、飛翔中の剣を、その場に停止させて、
「あー……んー……まあ、悪くないけどねぇ……」
と、まるで、漫画の編集者が『微妙な持ち込み作品』に評価を下すように、
「基礎は、それなりにシッカリしていて、それはいいんだけどねぇ……もろもろ、ちょっと粗いかなぁ……もっと、こう、グっと心の中に踏み込んでくるような、センスであったり、パッションであったり? そういうのが欲しいよねぇ……」
などと、評価を下してから、
「……でも、まあ……今後に期待ってことで、佳作ぐらいはあげようかなぁ。かなり特別だよ? 決して『俺は佳作をとれるぐらいの逸材なんだ!』とか慢心しちゃダメだよ。君らは、どっちも、ここからなんだから」
そんなセンの発言を受けて、
カイとパーリナンは、互いに、一度、顔を見合わせてから、
センに視線を戻す。
――カイが、
「あの……それは……もしかして……見逃してもらえる……という……ことでしょうか……」
と、そう聞くと、
センは、シレっとした顔で、
「俺は、一度も、お前らを殺すとは言ってねぇぞ。『お前の人生の最後の灯がどう』とか、それっぽいことは言ったが、別に殺すとは言ってねぇ。そもそも、俺の言葉に意味なんてねぇしな。俺は、ただ、お前らを使って、剣翼モードの実験をしただけだ」
そう言いながら、センは、
セラフに命令を下し、
剣翼モードから、元の人型へと変形させる。
「なかなか悪くなかったけど……相手が同格だと、流石に、ちょっと決定力不足な感じかなぁ。展開力と殲滅力に関しては、現時点でもそれなりだから、複数戦では、まあまあ活躍できるだろうけど……今のところ、ザコ狩り専門の技って感じだねぇ。……ただ、ポテンシャルはすごく感じたから、今後の成長に期待だな。……もう少し、火力を底上げして……速度も上げないとな……」
などと、反省しつつ、『今後の課題』について、頭の中でまとめてから、
パーリナンに視線を向けて、
「……さて、それでは、お前らとの対話パートに入ろうか。……さっきの提案、受けてやる。お前らの望み通り、お前らを俺の配下にしてやるよ。正式には、クロッカ様の配下だけどな。俺は、最終的に、誰の上にも立つ気はない。あくまでも、俺はクロッカ様の犬。オーライ?」




