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226話 スネオニズム。


 226話 スネオニズム。


 ヒュンヒュンと空気を切り裂きながら、襲い掛かってくる剣を、カイは、ギリギリのところで回避しつつ、


「センエース様! どうか!」


 『話を聞いてくれ』と、魂の叫びを発する。

 カイもパーリナンと同じで、現状を正しく理解している。

 センエースと戦っても勝ち目はない。

 生き残る手段があるとすれば、それは、センエースの犬になること。

 ただそれだけ。


 しかし、センは、一切、耳を傾けてくれなかった。

 飛翔する剣を回避しながら、

 カイは、何度も、センに懇願したが、

 センエースは、呆れるほど徹底した態度で、カイの全てをシカトしている。

 アイテムボックスから取り出した手鏡で、自分の顔を見ながら、


「美しいということばは、ぼくのためにあるんだなあ」


 などと、スネアニズムなナルシズムに浸るセンエース。


「なあ、セラフ、お前もそう思うだろう?」


 と、『背後に数本だけ残している剣翼』――セラフに、そう問いかけた。

 セラフは、恭しく、


「はい。尊き王よ。あなた様は、この世で最も美しい――」


「もうええて!」


 センは、一度、しんどそうに天を仰いでから、

 大きく息を吸って、


「ちーがーうーだーろーぉおお! このハゲぇええ!」


 極大のパワハラを炸裂させると、


「俺がナルシスト気取ったってことは、大喜利の時間が始まったってことだ! センエースで一言! キレのいい暴言でも吐いて、俺にクソでも食わせてろ! そうすりゃ、誰か笑うだろ! 知らんけど!」


 だいぶ目茶苦茶な言葉で世界を散らかしていくセン。


 ちなみに、センのパワハラに、セラフは、


「も……も……もうしわけ……お願いします……見捨てないで……」


 と、マジでビビっているので、

 センは慌てて、


「違う、違う、違う! もうめんどい!」


 そこから、セラフのケアで手一杯になったことで、

 カイの言葉は、より、センの耳に届かなくなった。


 メンヘラの相手をする彼氏ばりに、セラフを『よしよし』しているセン。

 それを見て、カイも、ようやく、


(ダメだ……こっちの話を聞く耳ゼロだ……)


 現実を痛感する。

 センエース相手に、常識的なムーブは通じない。


 カイが、『現実を痛感した』のを察したパーリナンが、

 飛翔する剣を、アクロバットに回避しながら、


「カイ! わかっただろう! 話が通じる相手じゃない! 闘って生き残るしかないんだ! 手を貸せ!」


 先ほど、救援要請をシカトされた件を、パーリナンは、普通に恨んでいるし、ムカついてはいる。

 が、しかし、パーリナンは、感情に流されず、冷静に物事を判断できる男。

 だから、怒りを飲みこみ、最善の一手を求めることができる。


 『パーリナンの提案に乗るしかない』と理解したカイは、

 ギっと奥歯をかみしめてから、


「先ほどは、大変申し訳ありませんでした、パーリナン様……全力でサポートさせていただきます……」


「そうだ! それでいいんだ! さっきの事は気にしなくていいから、とにかく、全力で抗え!!」


 そう叫んでから、

 剣を回避した直後、


「私が突っ込む! 援護しろぉおお!」


 これまでは、回避だけに完全集中していたが、

 ここからは、肉を切らせていく決死の構え。

 腰の剣を抜いて、全力のダッシュ。

 飛んでくる剣が、頬をかすめる。

 走る足に、ザクザクと傷がつく。

 腕も腹も傷ついているが、

 致命傷だけはなんとか避けつつ、

 カイの援護にも頼りつつ、


 パーリナンは、どうにか、こうにか、

 センに、『己の剣』が届くところまできた。

 パーリナンは、剣を振り上げながら、ダっと飛びあがり、


「うぉおおおお!」


 センと一刀両断しようと、振り上げた剣を、一直線に、センの頭へと振り下ろす!


 ガキィイイイン!!


 と、鋼の悲鳴が空間に響き渡る。

 パーリナンの剣は、センの頭に、間違いなく当たったが、

 センは微動だにしていない。

 センは、


「……効かないねぇ。ゴムだから」


 と、いつもの調子でファントムをさえずる。



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― 新着の感想 ―
シリアスな命の危機と、 センエースのシュールな言動が混ざり合う、 この独特の雰囲気が大好きです! 緊迫した戦闘中にメンヘラの相手をする彼氏ばりの、 光景が挟まるセンスに笑いました。
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