223話 ランク11の魔法。
223話 ランク11の魔法。
あまりに夢っぽすぎる現状に、ワナワナとチワワのように震えるパーリナンの後ろで、
カイも、
(……ヒークルを……一瞬で殺した……この魔人……すごすぎる……ヒークルの攻撃を一切受け付けない強靱な肉体……あの凶悪なアンデッドを追い返せる力……すごい……なにもかもが……規格外……おまけに、ランク11の魔法を使うという異常っぷり……)
カイは魔人なので、『ほとんど勉強というものをさせてもらえていない』という関係上、教養は少ないのだが、自分も魔法を使うので、『魔法のランク』に関しての理解はある。
カイは、ランク4の魔法を使える。
これは、相当なものであり、十七眷属クラスの凄まじい魔法。
『天才』と呼んでいい領域の魔法。
ランク3やランク4の魔法を使いこなせるカイは、だから、魔人の中では、破格の厚遇を受けている。
バカスカと気ままに殴られてはいるが、これでも、魔人の中では、かなり優遇されている方。
カイは、自分が、『魔人の中では、まだマシな方の待遇を受けていること』に対して、
『自分が高位の魔法を使えるからである』と正しく認識している。
そのぐらい、ランク4の魔法というのは価値がある。
この世界で、ランク3や4の魔法というのは、人間だったら、一生食いっぱぐれないぐらいの価値があるし、魔人であっても厚遇を受けるほどの、とんでもない希少価値があるもの。
……だというのに、
目の前の魔人は、ランク11の魔法を使っている。
この異常……日本人でも分かるように『預金』で例えると、
貯金2000万円の人が、残高『200京円』の通帳を目の当りにした……みたいな感じ。
だから、最初は、当然、『冗談』を疑う。
基本的には『ありえない』し、
『事実』だとしたら、『意味不明すぎて分からない』という結論以外はありえない。
カイとパーリナンが、センのヤバさに動揺している間に、
ヒークルが、センの魔法で、息を吹き返した。
だいぶやばい状態だったが、まだ完全に死んでいなかったので、センがその気になれば、蘇生させることは難しくない。
※『完全に死んでいる相手』を蘇らせるとなると、かなりの労力と手間が必要だし、確実性はない。最強魔人のセンエースですら、ガチ死者の蘇生は容易ではない。
意識を失ってはいるが、普通に息をしているヒークル……
そんなヒークルを指差しながら、センは、
「見ろ、ザコども」
パーリナンとカイに、
「これが、1分後の、貴様らの姿だ」
そんなセンのセリフに、
パーリナンが、
「私たちの心臓も抜き取る……ということか?」
と、マジ顔で、そう尋ねてきたので、
センは、ヘラヘラっと笑って、
「マジレスしてんじゃねぇよ。ただの小ボケだ。お前らの心臓を抜き取る理由なんざねぇよ」
「……一つ聞きたい」
「なんすか、十七眷属候補生のパーリナンさん」
「……ヒークル……様の……心臓を、あなたは、一瞬で、抜き取っていたが……それは……現実か? それとも私の妄想? あるいは幻覚?」
「ただの現実だぜ」
「できる……ものなのか? あなたも、相当な耐久力を誇っているようだが……ヒークル様も、身体能力はずば抜けている。そんなヒークル様の心臓を……一瞬で抜き取るなど……」
「大したことじゃねぇよ。オヤジはもっとうまく盗む。ぬきとる時、相手の傷口から血が出ないからね」
「……あなたの父は……あなた以上の力を持つというか……信じられない」
「いちいち信じなくていい。俺がいうことは、たいがい嘘だから」
「……はぁ?」
「俺と会話するときの注意点を一つ言っておく。基本、全部、シカトしろ。脊髄反射でテキトーなことを口走っているだけだから。病気なんだ、俺。アタマが正式にイっちゃってんだよ。そこらのファッションサイコとは格が違う、本物のキチ〇イ。それが、この俺、クロッカ様に愛されし狂気のマッド狂犬『センエース』だ」




