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221話 センエースは属さない。


 221話 センエースは属さない。


 ギュウっと、痛みを感じない程度に、ヒークルの手首を締め付けながら、センは、


「……『連帯』って要するに『グループ』って意味でしょ。俺は群れない。俺は真正の孤高。なのに、なんで、勝手に、『連帯っていうくくり』にさせられるんだって、心底イラつくんすよ。俺を、安易に、誰かと『くくる』んじゃねぇ。俺は常に孤高。絶対的な独り。孤独じゃなく孤高。頂点の唯一。……センエースは属さない。自分こそが最強だと理解しているからだ」


 中身のない言葉に見せかけて、ばちばちの本音。

 中身がなさそうな、空虚極まりない概念の羅列の中に、ほんの一匙、ガチを混ぜ込んでいくという、嘘つきの手法。

 詐欺師の常套句じょうとうく


「……ちなみに、俺、実は、『世界で一番嫌いな言葉』が、全部で80000以上あるんですよ。……大変でしょ。俺ってやつは、めちゃくちゃ生き辛そぉ。かわいそぉ」


 などと、軽やかにファントムな言葉を紡ぐ。

 そんなセンの態度を見て、

 ヒークルは、ニタリと笑い、


「そうか、お前……自分よりも、『他人が傷つけられる』のを嫌うタイプか。私には理解できん感性だが、そういうタイプがいることは知っている」


 ヒークルは、『自分』だけが大事。

 自分の享楽と誇りと自意識だけが全て。

 だから、『他人の苦しみ』に対して、『愉悦』以外を感じることがない。

 誰かが傷つく事で、自分が傷つく……ということは、ありえない。


 ――ヒークルは、『他者の痛みに寄り添う』という感性が一ミリも分からない……が、『苦しんでいる人を見るのが辛い』という感性を『想像すること』ぐらいはできる。

 『他人をおもんぱる感性』が『自分の中にない』からといって、『全く何も分からない』なんてことは、よほどのサイコじゃない限り、ありえない。

 ……『想像力』は、人間が持つ最強の武器。


「……センエース。貴様自身を痛めつけても、貴様は何も感じない。それに関しては、よくわかったよ。貴様は優れた肉体と、異常なメンタルを持つ変態。お前自身を罰することは、お前にとって、屁でもないこと。……だから、今後、ずっと、お前の失態を、お前以外に払わせる。まずは、このカイを……お前の目の前で潰す。こいつは有用な道具だから殺すわけにはいかないが、その寸前まで壊す。そして、その後、D地区の魔人たち全員を、お前の前で、グチャグチャにさせてもらう。泣きわめきながら壊れ死んでいく様を見ているがいい」


 と、悪意全開で、そんなことを口にするヒークル。


 そのツラを見て、センは、


「はぁ……やれやれ」


 ダルそうに溜息をつき、首を何度か左右に振ってから、


「あのねぇ、ヒークル様。そういう、魔人に対する理不尽な暴行は、クロッカ様から禁止令が出されているでしょう? あと、ガリオ様からも。ガリオ様は、今後、『魔人に対する理不尽な暴行を禁じる』という一文を龍法に刻むと仰っている。だから――」


「だからなんだ? 今はまだ、法にはなっていないだろう。それに、クロッカ様の命令は確かに聞いているが、『犯罪者に対する攻撃』に関しては禁じられていない。罪を犯した魔人は処される。そこは人間も魔人も変わらん。処されたくないのであれば、罪を犯さなければいい。罪を犯してしまったら、おとなしく罰をうけろ。それだけの話だ」


「……その理屈は、めちゃくちゃよく分かりますよ。まったくもってその通り。罰を受けたくなければ、おとなしくしていればいい。極めて合理的な内容です。……ただ、問題なのは、ここには罪をおかした者などいないというコト」


「十七眷属の一人であるこのヒークル様を『醜い豚』扱いしておいて、罪などないと言うかぁ! どの口がぁああああああああああああああ!!」



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― 新着の感想 ―
センとヒークルの心理戦が鳥肌モノでした! センの孤高という信念が、 ヒークルの合理的で残忍な悪意によって、 最大の弱点にされる展開に、読んでいて息を飲みました。
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