218話 すべてはセンエースのシナリオ通り。
218話 すべてはセンエースのシナリオ通り。
放たれた異次元砲は、
予定通り、セラフの『腕』をふっとばす……という幻影と共に、空の彼方へと消えていく。
『腕が吹っ飛んだ』という体のセラフは、
シナリオ通りに、
「とてつもない気迫。まるで、『真にこの世を統治すべき正当なる王』が如き清廉な輝き。体力を消耗している今、あなたほどの超人を相手にするのは分が悪い。今日のところは一旦、退かせてもらう」
と、そんな言葉を残し、
その場を後にした。
残されたセンは、
(統治がどうとか、王がどうとか……余計なこと、言わんでいい……まったく……)
と、一度、心の中で、ダルそうに溜息をついてから、
意識を切り替えて、カっと目を見開き、
「正義は勝つ! なぜなら、勝った方が正義だからだぁあああ!」
などと叫んでから、その場にバタリと倒れて、
「ごふっ」
と、一度、あえて、大げさに血を吐いてから、
ヒークルの目をジっと見つめて、
「お、おそろしく強大なアンデッドだった。俺でなければ、撃退できなかった、確実に。ヒークル様も、そう思うでしょう?」
「……」
ヒークルは、黙ったまま、ジっとセンを睨んでいたが、
おもむろに、
「私が、あのクソアンデッドを限界まで削っていたから、なんとか勝てたのだ。貴様は、トドメを任されただけ。私を心配し救援を差し向けてくれたガリオ様の顔をたてて、トドメの栄誉は与えたが、手柄の全てを持っていこうとする、その浅ましさは、流石に看過できんぞ」
「そんなカリカリしなさんな、ヒークル様。別に、手柄を全部持っていこうだなんて考えておりゃんせんよ」
センの、無礼なモノの言いように、ヒークルは、シッカリと腹を立てて、
「なんだ、その口の利き方は。最初からずっとそうだが、貴様は、魔人のくせに、態度がまったくなっていない!」
ヒステリックに、そう叫びながら、
倒れこんでいるセンの頭を、思いっきり踏みつけるヒークル。
そこらの魔人の頭だったら、グシャリとつぶれていただろうが、
「あれほどのアンデッドを、必死になって撃退した俺のアタマを、思いっきり踏みつけるとは……いかがなものでしょうかねぇ、ヒークル様。先ほど、自己紹介させていただいた通り、俺は、龍神族が可愛がっているペット。ペットは、家族の一員。つまりは、俺も、龍神族と言っても過言ではない。そんな俺のアタマを踏みつけるだなんて……まったく、勇気のある御方だ。どうやら、龍神族と、全面戦争するつもりらしい」
「何が家族の一員だ。貴様は、下賤な魔人に過ぎない。多少は頑丈で、それなりの魔力を持っているようだが、結局のところは、それだけだ。貴様が、薄汚い魔人であることに変わりはない」
そう言い捨てながら、
センの頭をグリグリと踏みしめていく。
本気でイラっとしたし、
龍神族を名乗るなど、不敬の極みなので、
もう、いっそ、このままマジで殺してやろうか、
と、そんな勢いで、全力で踏みしめていく……
が、センの頭は、踏みつぶすどころか、ヒビの一つも入りそうになかった。
(なんという頑丈な頭……こいつの身体能力は、本物だな……その上で、あの糞アンデッドを退けたほどの異次元砲の使い手。なるほど……クロッカが、この犬を拾ったのも納得だ。あのガキは、ガリオ様やパルカ様と違い、手ゴマが圧倒的に足りていない。あんなクソガキの命令を聞くような酔狂なバカなどいないからな)
与えられた手ゴマはいる。
十七眷属の『キリル』と『クルル』という二人は、
一応、クロッカ直属の配下。
ただ、二人とも、ガリオに命じられて、クロッカの直属になっているだけで、クロッカに忠誠心などはないと言い切っていいレベル。
仮に、クロッカとガリオが闘う事になった場合、キリルも、クルルも、余裕で、ガリオにつくだろう。




