217話 ウザすぎるオカン。
217話 ウザすぎるオカン。
(私の腕に関しては、どうなってもかまいませんが……たとえ演技でも、王に危害を加えることはできません)
強い言葉で、センの作戦を否定してくるセラフ。
時間の経過に伴い、彼女のセンに対する想いはどんどん加速していく。
センと一緒にいる時間が多い者は、だいたい、こんな風に壊れていく。
センの言う事とか、センの思想とか、そんなことはどうでもよくなり、
『センエースが無事であること』だけが何よりも大事で、
『センエースが傷つくことが、死ぬより辛い事』という、
『だいぶ子煩悩で過保護なオカン』みたいな思想になっていく。
――センは、セラフが、『ウザオカン化』していることに辟易しつつも、
作戦遂行のため、淡々と、
(テキトーに、攻撃してくれりゃ、あとは、こっちでうまいことやる。手を抜いたお前の攻撃でダメージなんか負わねぇよ。……『やられ方』に関しては、そこそこ自信があるんだ。お互い、うまいことやるぞ。いいな)
(…………かしこまりました)
まったく納得はいっていないが、
事実、自分程度の攻撃で、センがダメージを負うことはない、
と理解もしているため、セラフは、しぶしぶ了承した。
――打ち合わせをすませてから、『本格的』……に見える闘いを開始するセン。
細かな演技を駆使して、激闘の演出を盛り上げる。
……最初の方は、センがボコボコにやられるシーン。
セラフは、『傍目には派手に見えるものの、実は、ほとんど魔力もオーラも込められていない魔法』を連発し、
センは、それらの魔法に対して、
「うんぎゃああああああああー!」
「あんぎゃあああああああああああー!」
「おんぎゃぁあああああああああああああああああ!!」
「どんどらぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
と、何のダメージも受けていないのに、
盛大に悲鳴をあげて、自分で自分に傷をつけつつ、
時折、血も吐いたりしながら、とにかく派手に、やられ役を徹底する。
その様を見て、セラフが、テレパシーで、
(だ、大丈夫ですか、セン様! どこか、お怪我を?!)
などと、心配してくるものだから、
ガチで鬱陶しくなったセンは、思春期の中学生ばりに、
(もういいから! 気にしなくていいからぁ! 気にせず、攻撃してくれればいいから! ほんとは、なんも痛くもかゆくもねぇから!)
と、半ギレで応えてしまう。
さすがに、ガチ目で怒られてしまうと、セラフも何も言えず、
ただただ、センの命令通りに攻撃するだけのマシンになる。
センは、セラフの猛攻に、
「ぐぁあああああああああああああああ!」
吹っ飛ばされるという、過剰演技を決め込んでから、
「ま……まだだ……まだ、終わらんよ!」
必死に頑張っている風を装いつつ、
気迫だけで、セラフを精神的に追い詰めていく……というシーンを盛り上げていく。
その様子を真に受けているヒークルは、
(やはり、犬では勝てんか……逃げるしかないか……)
などと、最初は思ったものの、
センがボロボロになっても立ち向かい、
その様にセラフが圧倒されているのを見て、
(おっ……もしかしたら……追い返すぐらいは……できるか?)
と、軽く希望を持つ。
すると、
その希望が実ったかのように、
センが、最後に、
「俺は、負けない!! 友情、努力、勝利をテーマに、人生やらせてもらっている俺が、こんなところで負けるわけがない! 燃えろぉおおおおお! 俺のコスモぉおお! 震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!」
とにかく全力に見えるよう、知識の中にある中で最高クラスに『熱い決めゼリフ』を必死に叫びつつ、
「くらえぇえええええ! 異次元砲ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




