216話 アホな魔人の登場。
216話 アホな魔人の登場。
(なにか……いい言い訳……なにか……)
と、必死になって考えていると、
ちょうど、そのタイミングで、
「――おっと、こいつは、確かに、なかなかの怪物だぜ。この俺を震えさせるとは大したもんだ。グリフィン〇ールに10点!」
そんな、『何言っているのかさっぱりわからないこと』を叫ぶバカが登場。
顔面偏差値48ぐらいの魔人。
謎のアホ魔人の登場に、ヒークルが、
(な、なんだ、あの魔人……この辺では、見た事ないが……)
と思っていると、
そのアホ魔人は、
ヒークルに視線を向けて、
「あ、どーもー、こんにちはーっ」
と、アホな笑顔で、大きく手を振りながら、
「あなたが、ヒークル様ですね! 俺は、ガリオ様から命を受けて、助太刀に来たものです! 穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた龍神族の犬、スーパー魔人センエースと申します! 長い自己紹介で申し訳ありません! まだこの自己紹介に慣れてねぇんだ! というわけで、以後、お見知りおきを!」
何を言っているか、ずっと、イマイチよく分からないが、
この魔人が『ガリオからの支援であること』だけは理解したヒークル。
(支援不要の連絡はしていたが……念のため、兵を派遣してくれていたのか……ガリオ様は、そういうところ、抜け目がない。流石だ。しかし、魔人一人では、あのクソアンデッドには……いや、待て……センエース? その名前、ウワサで聞いたぞ。カソルン将軍やオンドリューを半殺しにして、クロッカに拾われたという、突然変異の異常魔人。……あのバカヅラが、噂の狂犬なのか……)
あまりに、覇気のない魔人なので、
本当に、噂のやべぇ犬なのか、疑問に抱いたが、
関係ない魔人が、ガリオからの使者を名乗るような暴挙をするとも思えないので、とりあえず、一旦信じることにするヒークル。
(……噂によれば、クロッカが拾った狂犬は、あのカソルン将軍を異次元砲で気絶させたという話……)
実際のところは、センは、カソルンの『配下』に異次元砲を使い、
カソルン自体は、閃拳で叩き潰したのだが、
噂の伝言ゲームが進んだ結果、
記憶に残りやすい『異次元砲を使った』という情報と、
『あのカソルン将軍が魔人に倒された』という情報、
この二つだけが残り、
『カソルン将軍が異次元砲で気絶させられた』というウワサが独り歩きすることとなった。
(……仮に、カソルン将軍のコンディションが最悪の状態だったとしても、あのカソルン将軍を魔法一発で気絶させたのは大したもの……その力をうまく活用できれば……あの糞アンデッドにも勝てるか?)
逃げて言い訳するよりも、倒してしまった方がいいのは、言うまでもない。
ヒークルは、一旦、思考を、『逃亡』から『討伐』へと切り替えて、
「センエースとか言ったな! 私は、あのアンデッドとの猛烈な激戦で、かなり疲弊している! トドメの栄誉をくれてやるから、好きに舞え!」
『あのバカヅラ犬が役に立たなかったときは、そのまま逃げよう』という打算も、ちらりと考えつつ、とりあえず、センエースという『矢』を、セラフへと放つヒークル。
「あのアンデッドにとどめを刺す。ミッション了解! センエース、目標を駆逐する!」
などと叫びながら、
センは、セラフに特攻をしかける。
センの攻撃を回避しつつ、
セラフは、
テレパシーで、
(尊き王よ。私は、どのように負ければよろしいですか?)
(立ち会いは強く当たって、あとは流れでお願いします)
(え、強く当たるのですか? ど、どの程度――)
(言ってみたかっただけのテンプレだ、無視しろ)
(は、はぁ)
(とりあえず、俺をボコボコにしろ。ここでは、お前を倒すのでなく、『なんとかギリギリのところで追い返す』という流れにする。最初は、お前にボコられて……で、最後に、俺が異次元砲を撃つから、それで、腕を吹っ飛ばされたっていう演技してくれ。……言っておくが、マジであたりにきて、ガチで腕を吹っ飛ばすんじゃねぇぞ。そういう幻影をまとってくれればいい)




