213話 突撃ぃい!
213話 突撃ぃい!
セラフの根城に辿り着いたヒークルは、
配下たちを、セラフ城の周囲に展開させつつ、
「クソアンデッドよ、聞こえるかぁああ! 昨日は油断したが、今日の私に驕りはない! 昨日と違い精鋭部隊も引き連れてきた! 確実に殺してやるから、覚悟しろぉおおお!!」
と、怒りのままに宣言してから、
「突撃ぃいいいいいいいい! あの不愉快で気持ちの悪い城をぶち壊せぇえええええええ!!」
ヒークルの命令に従い、
100人の配下たちは、一斉に飛び出す。
一人一人が存在値30を超えている、ヒークル自慢の精鋭部隊。
ちなみに、昨日の闘いでは、部隊は引き連れていなかった。
後方支援としてカイを連れていっただけで、パーリナンすら連れていっていなかった。
手持ちの有能な人材、そのほとんどを引き連れて挑んだ、今回の再戦……
確実に勝てると思ったヒークルだが、
現実は、ヒークルの思った通りにはいかなかった。
「出てきたぞぉ!」
「噂のアンデッドだ!」
「ガキじゃねぇか!」
「見た目に騙されるな! ただの擬態だ!」
100人の部下たちは、城から出てきたセラフを取り囲み、
「火矢ランク3!!」
「光矢ランク3!」
「火弾ランク2!」
「光球ランク1!」
『アンデッドに効果が高いコトでお馴染み』の光系や炎系の魔法を放つ。
魔法が使えない者は、武器を構えて一時待機。
一斉魔法発射が落ち着いたところで突撃する予定。
「あのアンデッドのクソガキ、あれだけ魔法をくらっていながら、ピンピンしていやがる!」
「流石、ヒークル様との一騎打ちで打ち勝っただけのことはある!」
「戦士隊、突撃ぃい! 俺に続けぇえ!」
「魔法隊は、戦士隊の強化と回復に専念しろ!」
そんな風に襲い掛かってくる戦士たちを、
セラフは、
(……こんな、カスども、まとめて殺してやりたい。尊き王の命令でなければ、こんな面倒なこと、絶対にやらない……)
と、心の中でつぶやきつつ、
襲い掛かってくる戦士たちの攻撃を回避しながら、
「闇色領域ランク5」
領域系の魔法を展開していく。
領域内において、魔法発動者の許可なく死ぬことはできないし、気絶することすら許されないという、拷問系の魔法。
セラフは、
『誰もセラフの許可なく死ぬことが出来なくなった』のを確認すると、
そのまま、流れの中で、
「毒毒毒霧ランク5」
毒の霧を展開させていく。
強大な魔法を連発するセラフに対し、
ヒークルの配下たちは、
「ランク5の魔法を連発だと?!」
「十七眷属の中でも上位者しか使えないランクの魔法じゃねぇか!」
「話に聞いていた通り、とんでもない化け物だぜ!」
「まずいぞ、離れろ! これほど強大な魔法だと、毒耐性の装備が役に立たない!」
「効果範囲はさほど広くない! 離れて闘うんだ!」
「戦士隊、下がれぇ!!」
ここにいる全員、ヒークルに鍛えられただけあって、みんな、それなりに優秀。
ランク5の魔法を連発するアンデッドを前にしても、臆することなく、最善を模索できる。
――ヒークルは、『魔人に八つ当たりするのが日課』という、際立ってクソな点をのぞくと、
案外、指揮官としても、戦士としても、指導官としても有能。
ヒークル精鋭部隊は、本当に優秀で、普通のモンスターが相手だったら、
仮に、存在値70~80ぐらいの傑出した怪物を相手にしたとしても、
どうにか処理できるだけの力を持った部隊。
――なのだが、
さすがに、セラフには勝てるわけがなかった。
なんせ、セラフの『本気』は『存在値470』なのだから。
仮に彼女が実力を出せば、ここにいる全員、1秒以内に全員死ぬ。
「連鎖龍毒ランク5」
セラフは、戦士隊が距離を取ったのを見計らって、範囲拡大化させた『強力な毒の魔法』を使う。




