表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/235

209話 噂の邪神。


 209話 噂の邪神。


 ――呆れ口調で、伝説を揶揄やゆするフチアを尻目に、

 ガリオが、冷めた顔で、


「……存在値500というのは、さすがに、誇張だろうが……『存在値200ぐらいの、とんでもない化け物が、この世界のどこかに眠っているという可能性はゼロではない』というのが私の考えだ。いないなら、いないで構わないし……いた場合は、処理しないといけない。それだけの話」


「……はぁ」


「案外、カラルームの街周辺に現れたアンデッドというのが、噂の邪神かもしれないぞ。ヒークルが手も足も出ないというのは、相当だろう?」


「確かに、とんでもないモンスターだと思います。ただ、ヒークルからの報告によると、存在値80ぐらいだという話……」


「太古から恐れられていた邪神が『存在値80ぐらいの、ちょっと強いモンスターでしかなかった』……としたら、かなり笑える話だと思わないか? いったい、人類は、これまで、何に恐れていたのだろう、と」


「まあ……そうですね」


「笑える話であったなら、それでいいし……そうでないのなら、もしもの時のために、準備をしておかなければいけない。それが私の……真なる王の仕事であり責務だ」



 ★



 ガリオの城を後にして、

 カラルームの街に向かったセンは、

 その道中で、


(セラフ……)


 セラフィムスパーダに、通信の魔法をつなぐ。

 すると、遠く離れた地、『カラルーム周辺で暴れているセラフ』は、即座に、


(およびですか、尊き王よ)


 と、慇懃いんぎんに答えてきた。

 セラフの忠誠心は、かなり高い。

 あまりに高すぎて、センは、普通に引いている。


(……セラフ、俺は、王になる気はねぇよ。『センエース』とかいう『クソ厄介キングフリーク』に粘着でもされたらたまんねぇからな。……なんだかんだ、『流浪の平民』が一番、自由で独りで豊かで静かで救われている。王になるってのは、牢獄に入るみたいなもの。暗くて、せまくて、怖くて、震える)


 などと、『どうでもいいファントムトーク』の中に、ちょっぴりだけ、『本音』をまぶしつつ、

 センは、セラフに、


(計画通り、ガリオは、俺に、お前の討伐任務を命じてきた。俺が到着するまで、とりあえず、カラルームの街にいるカス共を、グッチャグチャにしておけ。ただし、最初から言っている通り、誰も殺すなよ。誰を殺すかは俺が判断する。お前は何も背負わなくていい。このマッチポンプ計画の責任は、全て、俺がとる。分かったな)


(おおせのままに。この上なく尊き命の王よ)


(この上なく尊きって……俺ごときが『てっぺん』だったら、この世界、終わりだよ。王っていう大事な職業は、もっと、まともなやつがつくべきだ)




 ★




 ――ここは、カラルームの街。

 この街の中心に建てられている『最も大きな屋敷』が、

 十七眷属『ヒークル』の家。


 ヒークルは、寝室のベッドの上で、ボロボロの身体に回復魔法をかけつつ、


「もう一度出るぞ! あのくそアンデッド、今度こそぶっ殺してやる」


 つい先ほど、セラフにボコられて帰ってきたばかりだというのに、

 鼻息あらく、そうまくしたてる。

 人間性はともかく、『戦士』としては非常に優秀な男。

 それがガリオ直属の十七眷属『ヒークル』。

 存在値は58ぐらいで、十七眷属の中だと、そんなに高いわけではないが、

 これまでの人生、武の鍛錬を惜しまなかったので、戦闘力はかなり高い。


 それゆえに、プライドも高く、

 己の『無様な敗北』が許せない。


 先ほど、セラフに、ガッツリと殺されかけているので、普通に、かなりボロボロの状態だが、それでも、関係なく、再戦を求めて屋敷を飛び出そうとするヒークルに、

 ――配下の魔人である『カイ』が、


「そ、そのお体では……む、無理ではないでしょうか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ガリオとセンの腹の探り合いや、 セラフの忠誠心が強すぎる点など、 キャラクター同士の関係性や掛け合いが本当に面白いです。 この先の展開で、彼らがどう動くのか、目が離せません!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ