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203話 魔人の立場は変わらない。


 203話 魔人の立場は変わらない。


 ガリオは、さほど優秀な王ではないが、

 しかし、王族として生きてきた経験値から、

 多少は、『人を見る目』みたいなものが育ってきた。

 目の前にいる人間が『簡単にあしらえる本物のバカ』か『テキトーな対応をすると、逆に面倒になる小癪な蛇』かぐらいは分かる。


 センを『猪口才で小癪な蛇』であると認識した上で、

 最善を求めて頭を回した結果、

 ガリオは、センに、


「魔人の『り方』は、今後も変わりはしない。魔人に対する私の認識は、永遠に、『人間モドキのモンスター』であり、『人間の奴隷として使い潰されるだけの便利な道具』である」


 現実で封殺するという荒業に出る。

 下手な小細工よりも、パワープレイで荒々しく封殺してしまった方が有効と判断。

 それが正解かどうかは分からない。

 対人関係における交渉で何が正解で何が不正解かなど、事前に分かることはない。

 すべてはギャンブル。

 運否天賦の丁半博打だけが、人間関係の真髄。


 ガリオは続けて、


「しかし、便利な道具として、多少は大切に扱ってやってもかまわない。魔人は頑丈な道具だから、これまでは、多少、手荒に扱ってきた。それは事実。その事実に対して、魔人側が不満を抱いており、ゆえに、改善を求めたいという、貴様の意見は重々理解した。貴様の望む全てを叶えることはできないが……道具の扱い方に関して、今後、多少、認識を改めていくというのはやぶさかではない」


 ここでの、ガリオの言い分を、分かりやすく、野球で例えるならば、

 『これまで、打者は、球を打った直後、バットを放り投げていたが……それだと、バットが地面にたたきつけられて可哀そうなので、今後は、打ったあとも、優しく丁寧に、バットを地面に置くように心がけていきたい』

 と宣言しているような感じ。


 『道具バットをどう扱おうと、人間様の勝手だろう』と思ってはいるものの、

 『道具』側から『もっと優しく扱ってよ』と、うるさく言われてしまったので、

 『わかった、わかった。今後はもうちょっと丁寧に扱う方向で努力する』

 と、最低限の約束は取り付けた。


 ……ソレが、ガリオの視点における、魔人に対する対応・認識の全部。

 道具扱いなのは今後も絶対に変わらないし、『多少は丁寧に扱う』というのも、『そうしていく努力を心掛ける』というだけで、『絶対にそうする』と約束したわけでもない。


 ――そんなガリオの、『一般倫理の視点においては不誠実と断ずるにいささかの躊躇も持たぬ対応』に対し、

 センは、心の中で、


(対応としては、及第点と言えるだろう。だが、『王』とは、『完璧』でなければいけない絶対の指導者。及第点など赤点以下。王が出す点数は、120点以外、全部0点。クロッカは今のところ0点だが120点を目指している。ガリオ、お前は60点を目指し60点を取っている。日本の『腐敗した売国政治家』みたいに、マイナスの点数ばっかりとる真正のバカどもと比べればマシだし、ある意味で、有能だが……しかし、『王の立場でとる60点』は0点以下なんだ。その真理を理解せず、60点で満足している。その無様、吐き気すら覚える。……ガリオ、お前は王の器じゃない)


 センは、この短い時間の対話で、

 ガリオを見限った。

 それなりに強い怒りと共に、ガリオの無様を、心の中で及第し断罪する。


 センのガリオに対する怒りの熱量は、『センに対して明確に暴力を振るってきたオンドリューやエトマスに対してのソレ』よりも上。

 なぜなら、ガリオは、ただの貴族ではなく、『王』だから。

 ※実際に、『カール大帝国の皇帝』の地位についているのは、『ライラス』という人間なのだが、実質的に『世界の王』のポジションにいるのは龍神族の当主である『ヌアマリン・ロプティアス・ガリオ』。龍神族の傀儡かいらいでしかないライラスとは違い、ガリオはど真ん中の『王の責務』を背負っている。



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