199話 招集。
199話 招集。
クロッカが、渋い顔で、ぽつりと、
「このタイミングで、ガリオが、『あなたを始末する』ということはないと思うけれど、妙な難癖をつけてくる可能性は十分にあるわ。まだ時期じゃないから、できれば、変に怒らせるようなことはしないでほしいのだけれど……あなたの場合、言っても無駄っぽいのよね。……できれば、一緒に行って監視したいところだけれど……」
「――『一人で来い』と明言されていますから、それはダメでしょうねぇ。それに、俺もいい歳なんで、保護者同伴でなくとも、偉いさんへの挨拶ぐらいできますよ」
ひょうひょうとそう言うセン。
今回の招集に関して、クロッカは、色々と、心配をしている様子だったが、
流石に『ガリオからの招集命令内容を無視する』ということはできない。
だから、色々と思うところはあったものの、
結局、センを、一人で出向かせることになった。
★
「――貴様がクロッカ様の犬『センエース』か。噂は聞いている。ガリオ様がお待ち……でもないな。正直、到着まで、もっと時間がかかると思っていたから、待ってはいない」
いくつかの移動系魔法を駆使して、
速攻で、ガリオの城までたどり着いたセンは、
十七眷属の一人『フチア』の出迎えを受けた。
ガリオ直属の十七眷属『フチア』は、20代後半の美しい女性。
基本的には、『ガリオ専属のパシリ』という役職についている才女。
フチアは、高位の地位についているので、自分の領地も持ってはいるが、基本的には、ガリオの城で、ガリオの『世話係の隊長』としての職務をこなしている。
『執事長+メイド長』……といったところ。
この世界の王である『ガリオ』の世話係自体は、数千人単位で存在しており、その中の頂点がフチアといった感じ。
雑用を行うのではなく、この城内での雑用を、配下の世話係たちに振り分けるのが仕事。
「貴様は、クロッカ様の領地である第三クロッカ村にいたはず。正式な招集命令が下ってから、ほとんど時間は経っていないというのに……いったい、どうやって、これほどの速度で、ここまでくることができた?」
「いくつか、移動系の魔法が使えるもので。それらを全て総動員させていただきました。おかげで、魔力がほとんど残っておりません。かなり疲れましたが……偉大なガリオ様からの招集ですので、もたもたしていられません」
「……貴様がオンドリューを脅しつけた件は耳にしている。カソルン将軍に異次元砲を使ったという話も。……もろもろのウワサから、貴様のことは『アタマのおかしい狂犬』と認識していたが、どうやら、それなりに礼節をわきまえているようだな」
「カソルン将軍に関してはともかく、オンドリュー様の件に関しては、色々と誤解があるだけですよ」
「……はたして、どうかな。礼節はわきまえているようだが、その奥には、やはり狂気を感じる。……まあ、その辺に関しては、正直、どうでもいいのだけれど。オンドリューは、パルカ様直属の十七眷属。お前の処遇どうこうは、パルカ様がお決めになること。……ちなみに、貴様の言い方だと……カソルン将軍に関しては『誤解ではない』、という解釈になってしまうのだが、それは大丈夫か?」
「大丈夫ではないですが、その部分に関してのウワサに誤解はないと思いますので、何も訂正はできないというだけの話です」
「ほう」
「私は、魔人の一人として、カソルン将軍の暴虐非道・傍若無人な蛮行を黙って見ていることはできなかった。それだけの話ですよ。ちなみに、フチア様は、カソルン将軍が、魔人の村で何をしたのか、ご存じですか? どれだけ凄惨な惨劇だったか」
「いや、詳しくは聞いていない」
「では、詳しく説明させていただいてもよろしいですか?」
「必要ない。魔人がどうなろうと知ったことではない。私にとって重要なのは、貴様が、カソルン将軍を半殺しにしたという一点のみ。それ以外の枝葉に関しては一切興味がない」