198話 流れる血の量。
198話 流れる血の量。
「この村は、将来的に、極めて安全性の高い町として認知され、徐々に発展していく……と私は考えている」
そんなクロッカの発言に、
ダレイが、
「……とても素晴らしい未来予想図だと思います。ところで、それが実現するまで、どのぐらいの時間がかかるのでしょうか? そして、その間に、どれぐらいの血が流れるのでしょうか?」
ダレイは有能なリアリスト。
『大きな夢を語られたから』と言って『安易に熱狂したり』はしない。
大きな目標を前にすると、その実現性に対して、まずは疑念を抱き、そして、『その夢のせいで被る損害』を計算してしまう。
首長としては非常に優秀な資質。
ダレイは、村長として本当に有能。
そんなダレイに、
クロッカは、
「あなた達、村人のことは、センエース戦闘団が守る。もし、血が流れるとしたら……それは、センエース戦闘団のメンバーである魔人たちの血。そうよね、セン」
この辺のあれこれに関しては事前に打ち合わせ済みなので、
センは、軽く頭を下げつつ、淀みなく、
「その通りです、クロッカ様。血なまぐさい面倒事は、全て、我が『センエース戦闘団』におまかせください。鉄拳と流血でもって、全ての問題を処理してみせましょう」
そこで、センは、頭を上げて、
村人たちを見つめながら、
「これから、この村は俺が統治することになる……が、実際の『運営最終決定権』は、これまで通り、クロッカ様だ。根本はこれまでと何も変わらない。俺は、ただの中間管理職に過ぎない。俺の仕事はあくまでも、クロッカ様の武力装置としての底上げをはかること。この村の支配・運営に関しては、結局のところクロッカ様や……これまで頑張って、この村を仕切ってきた村長ダレイの仕事。俺のことは、そうだな……まあ、『この村を守る傭兵団の頭目』とでも思っておけばいい。……俺に傅く必要はないし、そもそも、俺を上位者として敬う必要もない。クロッカ様と村のつなぎ役。この村が何かしらの暴力にさらされた時の防波堤。そんな感じだ。ご理解OK?」
そんなセンの発言に対し、
村長ダレイが代表して、
「……村人を守るのは、本来、村長である私の仕事。あなたに押し付けたいとは思っていない」
「領主や統治者ってのは、『自身の支配区域で生活している民衆を守る』のが最大にして唯一の仕事。だから、俺に任せておけばいい……が、あんたも責任を果たしたいというのであれば、ともに頑張ってくれると嬉しいね。俺は、現段階で、そこそこ強いが、まだまだ強くなっていきたいと考えている。その上で、これから、領主として、チームとして、戦闘団としても強くなっていくつもりでいる。諸々一緒に頑張って、共に成長していこうや」
「……一つ確認しておきたいんだが、あなたの戦闘団は、何を『主目的』として活動するのですか? この村を守るため? それとも、モンスターと戦うため? それとも……上級国民に対する牽制のため?」
「全部だよ、ダレイ。全部やる」
「……」
「村も守る。モンスターの脅威や上級国民の理不尽からも守る。全部やらなくっちゃあならないってのが、団長の辛いとこだな。覚悟はいいか? 俺はできてる」
冗談交じり……に聞こえなくもなかったが、
その芯部には、本気の想いが秘められている……
と、ダレイは、そんな風に思った。
だから、ダレイは、
「これから……この村を……この村の人たちを……どうか、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。
★
その後、センが、ダレイや村人たちと、今後の事について、色々話をしていると、
ルーミッド→クロッカ経由で、『ガリオからの招集命令』がセンに伝わった。
招集内容は簡素で強固。
簡単に言えば、
『すぐに、一人でくるように』
という命令。