193話 本物の革命は起こりえない。
193話 本物の革命は起こりえない。
正攻法では得られなかったもの。
――具体的に言えば、『今以上の支配権』。
現状におけるクロッカは、本当に、なんの力も持っていない。
領地は、数も質もゴミみたいなもの。
自由にできる資産も、ガリオやパルカの視点ではカスみたいなもの。
世界運営に関して、彼女が出来ることは、本当に少ない。
……そして、彼女が何もしなければ、そのポジションが変わることは、生涯ありえない。
お飾りのお人形さんとして、何もできないまま、無意味な生涯を終えるだろう。
――そこで、ルーミッドが、
「クロッカ様が、革命に成功し、『今とは比べ物にならない大きな支配権』を得てしまった場合、いくつか問題が発生するように、私は思うのですが? ガリオ様的に、その辺はいかがお考えですか?」
口にはしないが、ぶっちゃけ、ルーミッド的には、『それでもいい』と思っている。
クロッカが頂点に立って、自分は、その下につく……という道を選んでもかまわない。
だが、ガリオやパルカはそうではないだろう。
クロッカが頂点に立った時には、高い確率で、二人とも死んでいるから。
ルーミッドの問いに対し、
ガリオは、余裕の表情で、
「さっきも言ったように、あの子は愚かさを振りかざしているが、実際のところは、非常に賢い子だ。『支配権を拡大するための革命』は起こしてくるだろうが、本格的な暴力革命など遂行するはずがない。あの子がそこまでバカじゃないのと同じく、私もパルカもバカではない。あの子のワガママを、『ある程度許す気』ではいるが、好き放題させる気はない。あくまでも、あの子の地位を、少々マシなものにするだけで、『革命を果たせるだけの力』を与える気はない。こちらにその気がない以上、あの子が、本当の意味での革命を果たせるだけの力を得ることはない。所詮は、かごの中の鳥。親心として、『それなりに快適なかご』を与えてやりたいとは思っているが、大空に解き放つ気はない」
「……そうですか……」
と、そう返事をしながら、
ルーミッドは、心の中で、
(俺も、理性的な視点で言えば、クロッカが、ガリオを倒せるとは思っていない。ガリオを倒すということは、龍神族と十七眷属の全てを相手にして勝つということ。キリルと、クルルは、一応、クロッカ直属の十七眷属だが……クロッカVS龍神族のガチ戦争になれば二人とも、普通に、ガリオにつくだろう。クロッカの勝率は極めて低い。だから、クロッカが本気でガリオにケンカを売るとは……正直思えない。しかし、現状、クロッカには、『センエース』がついている。センエースとクロッカの暴走が、うまいこと重なりあえば、本当の革命も実行しえるのではないか……と、そんな夢も見てしまう。基本的には、ありえない話だとは思うのだが……絶対にありえないとは思えないところが、あの二人のヤバさを如実に物語る)
そこで、ルーミッドは、センエースの異常性を、
頭の中で、改めて振り返り、
(……ガリオは、クロッカに『革命を果たせるだけの力』を与える気はないと認識しているが、クロッカは、すでにソレに近いモノを得ていると言っても過言ではないというのが俺の認識。……『センエース』という、この世界を覆しかねない、とてつもなく大きな力。ガリオは、クロッカのことを賢い子だと認識しているが……その程度の認識でいると、足元をすくわれる可能性がなくもない。ガリオに『センエースの異常性』について、もっと進言すべきか、それとも……)
ルーミッドは考える。
どの道を選択するのが、自分にとって最善なのか。
今のルーミッドには忠誠心など皆無。
昔は普通に、多少はあったが、セミハラの夢を見て以降、他者に本気の忠誠心を抱くことはなくなった。