表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

192/211

192話 王は不自由。


 192話 王は不自由。


「魔人が『戦力という観点』では非常に有能であることは昔から理解していた。できれば、私も、魔人を使って部隊の一つでも作りたかった……が、これまでは、メンツ(体裁)の問題で、魔人を大っぴらに使うことはできなかった。……『王族が魔人ごときを重宝する』という点でも『命を雑に使い捨てにする』と言う点でも、どっちの意味でも、メンツ的に問題があった」


 王は王であるからこそ『不自由である』というのも事実。

 王だからこそふるまえる自由というのも確かにあるが、

 王であるからこそ『やってはいけない事』というのも存外多い。


 また、魔人など、何人死のうがどうでもいいというのが、

 人類の基本的な視点ではあるものの、

 メンツというのは厄介なもので、

 人類にとっての『都合の善し悪し』はいったん横に置かれ、

 倫理だの道徳だの仁義だのモラルだの人道だの大義だの、

 鬱陶しい屁理屈が関わってくる。


 魔人は、忌避され、差別を受けているが、

 だからといって『大っぴらに虐殺』することは、流石に問題がある。

 問題があるからやらない……わけではないものの、

 問題がある行為だから、問題として扱わなければいけないのが王族の責務の一つ。


 そんな諸々の鬱陶しさを、

 クロッカは、『愚かさをブン回す』という力技で強引に処理していく。

 『メンツを保つ必要がない』からこそできる無茶。

 ……いや、クロッカにも、『保たないといけないメンツ』は一応あるのだが、

 クロッカは『バカにされること』をいとわない、鋼のメンタルの持ち主。

 だから舞える。

 羨ましいほど自由に。


「……民衆に対しては、これまで通り、『クロッカというバカ娘の暴走には辟易させられる』というていを装いつつ、裏ではクロッカの自由にさせて、『センエースを頭とした魔人部隊』を運用させる。クロッカに対して恩を売れる上、もしもの時の、『失っても別に痛まない特攻部隊』を確保することもできる。本来、魔人と言えど、使い捨てにするのは問題がある行為と非難される恐れがあるが、センエース戦闘団に関して言えば、その責任の全てを、クロッカになすりつけることができる。すべてはクロッカの問題。龍神族の問題ではない。もちろん、クロッカは龍神族の人間だが、あいつが『無茶な暴走』を繰り返しているというのは周知の事実。われわれは、『迷惑をこうむった被害者』の立場であることを強調してメンツを保つ」


 クロッカの暴走は、ガリオ的に、

 多少のリスクはあるが、かなりハイリターンなムーブ。


 だから、ガリオもパルカも、

 クロッカの暴走を、『ちょこちょこ許す』のである。

 『体裁が悪い』ので、『何もかも全部許す』というわけにはいかないが、

 『カワイイ娘のワガママだから仕方ない』という面目で、

 龍神族にとって『実は利のある、クロッカの暴走』を、

 いい感じに許容していく。


 クロッカは、そんな父や兄の思惑も全て理解した上で、

 丁寧に『流石に聞いてもらえないワガママ』と『絶対に通したいワガママ』を使い分ける。


 これまでは、両者ともに、

 いいバランスで、お互いを利用しあってきた。

 『地位が高すぎて、全ての行動に制限がつくガリオ&パルカ』と、

 『もはや恥も外聞もないゆえ、自由に暴れ回れるクロッカ』という両者。

 

 ガリオ的には、今後も、その関係性を維持できると思っている。


「クロッカは愚かな部分もあるが、基本的には賢い子だ。あの子は、頭の悪い無茶をしているように見せておきつつ、着実に、己の支配権を増やそうとしている。今回のように、魔人を巧みに使うというのは、総合的な視点でみると、非常に良い手だ。邪道であることは否めない事実だが、今後、あの子は、『正攻法では得られないもの』を得るだろう」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ