191話 邪神を復活させるための組織。
191話 邪神を復活させるための組織。
第一アルファの人類と同じで、他の世界の人類も、
『終末予言(強大な魔の暴力により世界が終わる系の言い伝え)』に対しては、
『懐疑的な者』と『真っ向から信じる者』の二パターンに分かれる。
ガリオは、リアリストであるため、
基本的には、その手の『都市伝説』や『根拠ゼロの予言』など信じていない。
――ただ、事実として、ガリオは、この世界を統べる王である。
ゆえに『世界が滅びる可能性』に対しては、
『支配者』として、真摯に向き合う義務がある。
――ガリオは……『この世界の覇者である龍神族』は、その強健な独裁体制で、この世界に、多くの絶望をもたらしている。
魔人に対する差別や、純粋な病気・食糧難・貧富格差などなど、対応しきれていない問題が山ほどある。
……ただ、ガリオが、『支配者として無能・怠惰であるか』といえば、決してそうではない。
ガリオも、パルカも、『完璧な王族』ではないが、
『支配者としての責務を果たそう』と努力はしている。
ただ、現状だと、『やるべきこと』が多いため、
『弱者救済』などは、後回しになっているのが現状。
将来的に、全ての問題が片付いた時、
最低限の『福祉体制』を整える可能性はある……が、
現状のように課題が山積みになっている内は、
――『社会的弱者は養分でしかない』という強固な姿勢を崩せない。
『精度の低い世界』において『弱者』は『支配者層の奴隷』以外にはなりえないのだ。
――『第一アルファの日本』のような、
『社会進化の精度的』には『最高峰』と言っていい『道徳を重んじる国』ですら、
『労働者(社会的弱者)』は『資本家と政治家(社会的強者)』の奴隷、
という基本姿勢に揺らぎはない。
『超絶高潔な絶対的指導者』による完全統治を受けていない世界において、
弱者が救われるということは、基本的にありえない。
「カドヒトを絶対的リーダーとする、反社会的組織『邪教団ゼノ』……奴らの最大の目的は『龍神族と十七眷属を滅ぼすこと』だとされているが……その最終手段として『邪神を復活させて、我々へぶつける』という手を取るのではないかという噂がある」
「それは私も聞いたことがあります。邪教団を名乗っているのは、邪神を崇拝しているという側面があるからで、カドヒトは、最終的に、己の魂を奉げて、邪神を召喚し、世界を終わらせるつもりだ……と。事実かどうかは知りませんが」
「事実かどうかはどうでもいい。問題なのは、『その可能性』と、どう向き合うかだ。何が起きても対応できるように準備しておくことが、支配者の務め。……別に、カドヒトや邪神だけではなく、世界には、他にも問題がいくらでも起こりえるのだから、各種の問題に備えて、『戦力を増強させておく』ということは必要不可欠な行為」
「戦力増強という視点においては、『クロッカ様の犬』の台頭は、むしろ望ましいことである……というのが、ガリオ様のお考えでしょうか」
「まさにその通り。本来であれば、『有能な人材や、貴重な人材』は、『損失の恐怖』がつきまとうもの。しかし、クロッカの犬――『センエース』は、しょせん魔人。そして、センエースが、これから創り上げていく『戦闘団』も、『基本メンバーは魔人が担う』という話。……『魔人主体で構成された組織』を龍神族が擁立するというのは、体面的に問題があるが、しかし、実利の観点で言えば、『非常においしい』というのが事実」
全滅しても痛くない、有能な部隊。
組織運営の視点では最高。
たとえるなら『将棋における、と金』みたいな感じ。
『金として運用できるため、非常に強力なコマだが、所詮は歩なので、取られても、損失としては少量で勘定できる。コスパで言えば、龍や馬よりも上。と金こそが最強』。