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189話 ヌルっと試験終了。


 189話 ヌルっと試験終了。


「そう……まあ、それならそれでもいいわ。ただ、あなたの勝手な都合だけで、私を落としたとなると、あなた、お父様から首を切られるんじゃなくて?」


「ガリオ様が、その程度で、俺を切るワケないでしょう」


「……言っていることが目茶苦茶ね。さっきは、ソレを脅しの材料に使っていたくせに」


「使えるものは何でも使いますよ、そりゃ。そして、状況に応じて立場と言動というのは変わるもの。それも、人間なら当然です。それを咎めるのは、青臭いお嬢ちゃんだけですよ、クロッカ様」


「……センとの闘いを経て、あなた、ずいぶんと、なんというか……センみたいなヤバさを孕むようになったわね。その程度の実力で、センエースのモノマネなんかしたら、地獄を見るだけだと思うわよ」


「センエースのモノマネなどしていませんよ。『大した権力を持っていないクロッカ様』が相手だから、そこそこ自由にふるまえるというだけの話。……俺を心底から跪かせたいのであれば、龍神族の頂点に立ってください。あなたが頂点に立ったその時は……今より、もう少しだけ、重めの忠誠心を見せてあげますよ」


「……頂点に立っても少しだけとは……随分と、プライドがお高いのね。そんなところも、センに似ているんじゃなくて?」


「……ふふ……」


 と、ルーミッドは、最後に、鼻で笑った。


 その直後、

 先ほど、クロッカに殺されたはずのセンが、ムクリと起き上がって、


「……いやぁ、ちょっと死んでましたぁ。『死ぬかもしれない』を通りこして、普通に死んでいましたよ。流石、クロッカ様、お強い! 俺を殺せるとはアッパレ! このセンエースさんは、『クロッカ様を殺せるほどの強者』だというのに、その俺を殺してしまうとは! さすが、龍神族歴代最強の天才! 特級の器! 試験で落ちるわけがない才女! そうでしょう、ルーミッド様!」


 と、好き放題、好き勝手なことを叫ぶセンに、

 ルーミッドは、


「クロッカ様は不合格だ」


 と、そんな言葉を投げかけた。


「……え?」


 びっくり仰天して目を丸くするセンに、

 クロッカが、


「セン。どうやら、死んだふりしているだけではダメということらしいわ。一応、あなたの合格は既に宣言してしまったから、泣く泣く受け入れるようだけれど、私の合格は、流石に認められない……ということらしいわよ。正直、筋が通った意見だから、逆らう気にはならないわ」


「……いいんですか、クロッカ様。なんだったら、もう一回、殺されますけど? 今度は、もっとうまく死にますよ。ルーミッド様が認めざるをえないぐらい、凄惨に」


 と、剣呑なことをほざくセンに、

 クロッカは、微笑を浮かべて、


「私はあなたを殺せない」


 と、ただの本音を口にした。


 そんな断定をされてしまえば、

 もう、センには何もできない。


「そっすか、じゃあ、しゃあないっすね」


 ――そんな感じで、等級試験は、ヌルっと幕を閉じた。


 おもな結果は以下の通り。

 特級合格者 センエース

 一級合格者 クロッカ

 二級合格者 ビシャ

 三級合格者 ゼック バリソン ジバ ケイルス ハロ コータス サバンス

 四級合格者 ラス

 五級合格者 リノ マト ヤン

 七級合格者 ハプ レク ノイラ






 ★






 ――ここは、この世界の支配者龍神族の現当主にしてクロッカの実父『ヌアマリン・ロプティアス・ガリオ』の城。


 ルーミッドから、等級試験の結果を聞かされたガリオは、

 自室で、渋い顔をしながら、

 『センエースのデータが記された資料』をまじまじと見つめつつ、


「クロッカが拾った犬……想定していたよりも、ずいぶんと、スペックが高いようだな」


 と、声をかけられたルーミッドは、

 直立不動の姿勢で、


「今回の試験だけでは、犬の底をはかることが出来なかったので、断定したことは言えませんが……私の見立てだと、おそらく、ガリオ様やパルカ様とも、まともにやりあえる器かと存じます」


「……ふむ……」


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