184話 もういい!
184話 もういい!
「深淵閃風」
クロッカの足を華麗に払って、
「うわぁ!」
彼女の体勢をガッツリと崩すと、
彼女の頭を掴んで、
「龍毒ランク5」
あえて、クロッカの得意技である『毒』を、彼女の体内へと流し込みつつ、
掴んだ彼女の頭を、地面に向かってたたきつけていく。
明確な殺意のある行動の連発を前に、クロッカは悲鳴をあげることしかできない。
「うっ、ぐぅううう!」
毒の使い手であるクロッカは、当然、毒耐性が、かなり高い……
が、センの毒は、そんなクロッカの耐性をあっさりと貫通していく。
クロッカは、血走った目で、淀んだ血を吐きながら、
「うがががが、ぐぅう! せ、セン!! やめなさい! もういい! もう、わかったから!!」
センの容赦ない猛攻に対し、
飼い主として、全力で抗議をしていくクロッカ。
そんなクロッカに、
センは、
「……『もういい』ってのは、こっちのセリフだぜ。お行儀がいいだけの時間は終了。……本気でこいよ、イカレお嬢。高みを魅せてやる」
そう言いながら、さらに暴行を加えていくセン。
普通にボコボコにされたクロッカは、
流石にイラっとしたのか、
「バカ犬がぁあ! 武装闘気!!!」
全ステータスを底上げする魔法を使った上で、
魔力を両手に集めて、
「龍毒ランク9!!」
本気の魔法を放った。
クロッカに出来る最強最高の一撃。
そんなクロッカの切り札を、
センは、
「うぉお……いいねぇっ!」
真正面から受け止めた。
クロッカの本気の毒を、全身で味わうと、
「なかなかフルーティなアタックだ。コクが深い……質の高い酸味……しかし、まだ熟成されていない……せめて、あと100年ぐらいは寝かせておきたいところだな」
などと、そんな評価を下すセン。
クロッカは、
「私の龍毒ランク9を受けて、ピンピンしているなんて……信じられない……今の龍毒は……あなたを本気で『行動不能にさせるつもり』で撃ったのに……ど、どうして……」
「毒じゃ死なない。家庭の事情でね」
などと、ファントムに受け流すと、
センは、クロッカの懐に踏み込んで、
「神速閃拳」
ダダダダダダダっと、クロッカの動体視力でも追いきれない、異常な速度の連打を、クロッカの全身に容赦なく叩き込んでいくセン。
殺意しか感じない一手。
冗談でもシャレでもなく、ガチで殺しにかかっていると分かる猛攻。
その後、クロッカは、
(ほ、本当に死ぬ……)
そう思ったのか、どうにか逃げようとするが、
その逃げ道を、センが、
「俺から逃げるのは不可能だぜ」
ガッツリとふさいでいく。
そして、さらに猛攻。
その間、クロッカは、『ただボコられた』のではなく、
いくつか、毒系の切り札を切って、センの動きを止めようとしたのだが、
(……通らない……本当に、毒がきかない?)
ほかにも、麻痺や氷結などの状態異常を押し付ける魔法を使うが、
毒系に比べると、どれも、かなりランクが低いので、
「感度ビンビンの俺に、ランク5の魔法なんざ通るわけねぇだろ、ベイベッ」
あらゆるデバフをはねのけて、
ひたすらに、クロッカへ攻撃を継続するセン。
しだいにクロッカの意識が揺らいでいく。
だが、クロッカは、気絶することなく、
ギリっと奥歯をかみしめて、
「ど……毒呪縛ランク8」
センの動きを止めようと強大な魔法を使っていく。
そんなクロッカに、
センは、
「この期に及んで、まだ、俺を『止めよう』ってか? 話にならないねぇ。殺す気でこいよ。そうじゃないと、俺はとまらねぇからよ」
まだまだ止まらず、
クロッカに猛攻を加えていく。
ひたすらに、容赦なく、徹底的に、
クロッカを殺そうとするセン……
クロッカは、
「ぐっ!」
一瞬、本気で、センに『攻撃』をしかけようかとも思った。
が……
「……」
頭の中で、色々な感情が廻った。
フラつく無意識の底で、
クロッカは……
「……どうして……?」
と、センに、色々な意味を含んだ質問を投げかけた。