182話 クロッカにとっての大問題。
182話 クロッカにとっての大問題。
口八丁でクロッカを追い込んでいくルーミッド。
実際のところ、仮に、クロッカがここで降りたとしても、
ルーミッドに殺処分が下されることはない……と思うが、
ガリオが実際のところ、どう出るか、クロッカには分からない。
それに、ガリオがどうするかは不明でも、
ルーミッドが勝手に首を刈ってしまえば、普通に大問題。
ルーミッドの大問題というか、クロッカにとっての大問題。
(まだ、状況は整っていない……こんなところで、本格的に、ガリオと敵対するのは……あまりにも愚策……けれど……)
だからといって、センを殺すなどもってのほか。
ガリオと敵対するよりも、センを殺す方が問題。
ガリオにケンカを売るか、センを殺すか……その二択でしかないのであれば、クロッカは腹を決めて、父と殺し合う覚悟を固めていただろう。
しかし、現状を整理すると、
実際のところ、ガリオは関係なく、
『センが死ぬか、クロッカが死ぬか、ルーミッドが死ぬか』という、
そんな分かりやすい三択が目の前にあるだけ。
そして、クロッカからすれば、どれも許容できない。
クロッカの視点だと、ルーミッドは『死の罰』を受けるほどの大罪はおかしていない。
それに、ルーミッドの理屈だと、ルーミッドの死は『クロッカがワガママ放題やったことが原因』という流れに落ち着いてしまう。
ただのワガママで、十七眷属を死なせてしまう……など……それは、社会的に見ても許されない罪だし、純粋に、クロッカとしても、そんな罪はおかしたくない。
……クロッカは、単純に、ルーミッドを死なせたくないと思っているし、
ルーミッドを死なせたら、普通に面倒くさくもなる。
けど、そうなると、自分が死ぬか、センが死ぬかの二択になる。
この面倒くさい択を前に、クロッカが、悩んでいると、
ルーミッドが、
「それでは、試験を開始します。さあ、お好きな道をお選びください、お嬢様」
試験を開始してしまった。
ルーミッドは、クロッカに試験開始の合図をした直後、
少し離れた場所にいるセンに向かって、
手をメガホンにして、
「センエース! 試験はもう始まっている! クロッカ様を殺せば、合格だ! 頑張れ!」
と、大声で、そう叫んだ。
センは、
「……」
軽くタメ息をつきつつ、
クロッカとルーミッドの元まで近づいていって、
クロッカに、
「……クロッカ様、『ルーミッド様との話』とやらは、まとまらなかったのですか? 龍神族としての権限を駆使して、やめさせてくださいよ。俺、死にたくないっすよ。死ぬぐらいなら、試験を放棄します」
と、至極当然なことをいうセンに、
ルーミッドが、
「残念だが、お前が試験を放棄した場合、俺は自決する」
「? わけわからん結論ですが……まあ、死にたければ勝手にどうぞ」
「俺が死んだら、その責任は、クロッカ様が背負う」
「……また、だいぶ、ぶっ飛んだ論理ですね」
「別に、そうでもない。ワガママお嬢様に振り回されて疲弊して自決した可哀そうな十七眷属……ストーリーとしては難しくない。もし、まだ分からないのなら、直接的な言葉で、現状を教えてやろう。俺は俺の命で、お前らの革命を穢してやると言っている。お前らが、革命のようなものをしたがっているのは知っている。クロッカ様の性格を考えると、まあ、大義があってのことだろう。だが、特に罪のない俺をワガママで殺してしまえば、お前らは大義を失う。それでも、革命を起こすことはできるだろうし、成功させることも、お前らなら、もしかしたら、できるかもしれない……けど、俺の命は、お前らの革命を永遠に穢すことができるだろう。俺の命がけの抗議は、永劫、クロッカ様の心を締め付ける」
「クロッカ様は、無慈悲な方なので、数日後には、あなたの死など忘れている気がしなくもないですが」