表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

181/211

181話 人間試験。


 181話 人間試験。


「底が見えても、死なれてしまったら意味がないのよ。私は――」


「あの犬を使って革命を起こすつもりだからですか? それはあなたの都合であって、俺には一切関係がないですね」


「……」


「腹をくくってください、クロッカ様。ここからは、お遊びではなく、本気の『人間試験』です」


「……」


 そこで、クロッカは、

 魔力とオーラを捻り上げて、

 ガシィっと、ルーミッドの胸倉を掴み上げると、


「調子に乗るな、眷属風情が。この私に偉そうな口を聞きやがって。私の立場と力なら、貴様を殺すぐらい秒で済む! 貴様を殺せば、貴様の『直属上司(飼い主)』である『ガリオ(クソ親父)』はキレるだろうが、あいつも、私がその気になれば、余裕でぶち殺せるんだ! わかったか、ゴミカス!!」


「俺を殺したかったら、お好きにどうぞ」


「っ?! き、貴様ぁ……」


「ここで、このまま、あんたに殺されて死ぬかもしれないから、最後に、本音で助言をしてやろう。『大の大人の男のプライド』を、あまりナメるなよ、お嬢ちゃん。『死んでも貫かなきゃいけない意地』ってのが、バカな男にはあるんだよ」


「……」


 そこで、ルーミッドは、表情を柔和なものに変えて、


「最後の最後にもう一度だけ言います。好きな道を選んでください、クロッカ様。あ、ちなみに逃げることは許しませんよ。あなたも犬も。もし、この試験を放棄するのであれば、俺は、試験をまっとうに進めることが出来なかった責任を取って自決します」


「……あんた、本当に、ずっと、何を言っているの? 仮に、ここで、私とセンが試験を降りたとしても、それは、私たちが特級試験の受験資格を放棄したというだけで、あなたに責任どうこうは発生しない。もし、それで、責任どうこうの話になるのであれば、すでに、ここまでの試験で、何人も、『命の危険』を理由に試験を辞退しているのだから、あなたは、問答無用で首を切らないといけなくなる」


「クロッカ様、他の雑魚どもと、あなた様を一緒にしてはいけない」


「……」


「あなた様にとっては、等級試験など、お遊びの延長に過ぎないかもしれない。あなた様は、この試験で『自分の犬にハクをつけさせたい』……というぐらいにしか考えていなかったのかもしれない。けれど、あなたがどう思っていようと関係なく、この試験の監督である俺には、相応の責任というものがあるのです。龍神族であるあなたに、無茶な試験内容を課して、特級試験を辞退させた……となれば、責任問題になるのは当然。私が自決しなくとも、ガリオ様から首を切られるでしょう。ガリオ様は、私を買ってくださっているので、惜しんでくださるでしょうけれど、それとこれとは話が別。支配者には支配者の責任というものがある。あなたにとってはお遊び感覚の些事でも、下の者にとっては、命にかかわる大事になることもある。いい社会勉強ができましたね。あなたのせいで、俺は死ぬんです」


「……それだと、『センだけが降りた場合』は、問題はないということになるわね。あなたの、その『どうしても、センにだけは特級を取らせたくないという気持ち』は分からないでもないけれど、でも――」


「いえいえ、クロッカ様。先ほど、言わせていただきました通り、センエースが降りても自決しますよ、俺は」


「……それはなぜ?」


「理由? 理由か……そうですねぇ……まあ、特にないですが、とりあえず、センが降りた場合、俺は死にます」


「……」


「あえて理由を述べさせていただくのであれば……センエースが降りてしまうと、人間試験にならない。あなたの心と、センエースの魂をはかる……それが、この試験において、俺の求めるもの。だから、安易に降りられるのが一番困る。困るから、命をかける。単純な話です」


「死にたければ勝手に死ね。あなたの命を慮る理由が私にはない。あんたが勝手に死んだことで、ガリオが切れたとしてもそんなことは知ったことじゃない」


「そうですか。では、そのように」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ