表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/212

180話 合格。


 180話 合格。


「俺は合格……でいいですよね?」


 と、確認してくるセンに、

 ルーミッドは、まっすぐな視線を向けて、数秒悩む。


「不合格……と言いたいところだが、それは俺の流儀に反する」


「ほう……ということは? つまり? 具体的には?」


「……合格だ」


「あざぁまあーす!」


 バっと体をくの字に曲げて礼を言うセン。

 そんな深々と礼をするセンを尻目に、ルーミッドは、


(あれだけの実力を見せつけられては、さすがに一級落第というわけにはいかない……だが特級だけは取らさない。……いくらお前でもクロッカには勝てまい)


 心の中で、そう言い捨ててから、

 そのまま、


「等級試験最後の『特級試験』はこのまま行う。最後の試験まで残った二人で殺し合って、『相手を殺した方』が合格だ」


 などと、そんな、無茶なことを言い出した。


 それに対して、センが、


「殺したら合格……っすか? また、ずいぶんな試験内容っすね? 常識的に考えてそんなわけがない……という前提を踏まえて考察するに……『殺す』は比喩で、倒したら合格……そう捉えていいっすかね?」


「違う。殺したら合格だ。相手を絶命させた方が合格。死んだら不合格。不合格になった場合は、次回の等級試験で、またがんばれ」


「……おやおや。どうしました? 急に頭がバグりましたか? 死んだら次回もクソもありませんが?」


「それはそっちの都合であって、俺には関係のないこと」


「マジで急にどうしたんすか? さっきまで、そこそこ理知的に粛々と試験を進めていたのに、ここに至って、いきなり、お馬鹿さんになっているじゃないっすか」


 と、そんな文句を垂れ流すセン。

 センから視線を外し、ルーミッドは、心の中で、


(俺の中で、この犬……センエースに対する悪意と嫌悪が止まらない)


 ルーミッドの中で、グツグツと、『強い感情』が膨れ上がっていく。

 『比較的強めの精神力』で、どうにか押さえ込んでいるが、『どうしても制御仕切れない部分が漏れ出してしまう』ほどに、センエースに対する強い感情が止まらない。


 そこで、クロッカが、

 ルーミッドに、


「ルーミッド、話があるわ。こっちに来なさい」


 そう言って、センから少し離れた場所に、ルーミッドを連れ出し、


「何を馬鹿なことを言っているの。『相手を殺さないと合格できないルール』だと、センだけではなく、私も合格できないじゃない」


「できるでしょう。あの犬を殺せばいいんです」


「………………どういうつもり?」


「この試験の試験官は俺です。俺に全ての権限がある。なのに、ここまで、善意と忠誠心だけで、あなたの意向を丸呑みしてきました。ここまでの段階で、あなたは、十分、ワガママの限りを尽くしてきた。最後ぐらい、ワガママを垂れ流すだけではなく、俺の試験と本気で向き合ってみたらいかがでしょう? それとも、俺を殺して、試験そのものを無かったことにしますか? 別にそれでもいい……と今の俺は思っていますよ」


「……」


「好きにしてください、クロッカ様」


「なぜ、急にそんな……」


「さっき、あの犬との……センエースとの戦いの中で、俺の中の何かが弾けましてね。地位も名誉もどうでもいい……とまでは言いませんが、『それよりも優先したいこと』ができてしまったので、もう、あなたの思い通りにはしません」


 ルーミッドの『本音』を最初に記しておく。

 彼は、クロッカやセンに、悪意をぶつけたいだけ。

 つまりは、いやがらせがしたいだけ。

 だから、無茶を言って困らせている。

 ……それだけ。


 ルーミッドは、困惑しているクロッカに、続けて、


「しかし、考えようによっては、チャンスなんじゃないですか? これだけ『本気の殺意』が『前提』の試験になれば、あの犬の底が見えるかもしれませんよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あれだけの実力を見せつけられては、さすがに一級落第というわけにはいかない……だが特急だけは取らさない。……いくらお前でもクロッカには勝てまい 特急じゃなくて特級じゃないですか? 今更ですけど私結構…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ