表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

173/211

173話 革命の定義。


 173話 革命の定義。


 ――仮に『家を建てる』という作業で例えるが、クロッカは『壁紙は白の方がいいですわ』『カーテンは赤の方がいいかも』とワガママを言うぐらいが限度で、それ以外の、間取りであったり外観であったり、そういった根本的な部分に対する口出しは出来ない状況にある。


 そんな、ある種理不尽な『力関係』にテコ入れを入れる……という『革命』なら、やり方次第で、成功しなくもない……

 というのが、ルーミッドの読み。

 つまりは、常識的な読み。

 ルーミッドは、まだ、クロッカを誤解している。

 というよりも、まさか、本気で『家族全員を皆殺しにして、完全なワントップ独裁体制にしていくつもり』だとは思わない。


 『クロッカが起こそうとしている革命』は、あくまでも『発言権を高めるための闘い』に過ぎない……そんな『認識の齟齬』が、『全員(ガリオもパルカも、十七眷属も、民衆も)』の中で、共通しているからこそ、『クロッカが革命を起こそうとしているかも』という噂が広がっていながら、クロッカが処罰されることもなく、放置されている理由。


 『まあ、今の段階だと、自分の発言権が少なすぎるから、それを増やしたいと思うのは当然だよね』

 『クロッカ様は実力的に優れているし、もっと高い地位につきたいと思うのも当然』


 と、『周囲の者(民衆ふくむ)』は認識しており、

 ガリオやパルカも、


 『まあ、その野心は買ってやってもいい。なんなら、発言権を増してやってもいい』

 『そのための闘いを起こすつもりなら、相手になってやろう。もし、うまいこと、その革命を果たせたなら、支配権を拡大してやってもいい』


 などと、娘・妹の発奮に対し、ある種、『帝王学的な肯定』を示している。

 むしろ、兄や父は、『王族に産まれていながら、権力を求めないような軟弱者でなくて良かった』などとも思っているぐらい。


(あの犬……おそらく、まだまだ底力を隠している。魔法に対する理解は、魔法の精度を底上げしてくれる……あの犬が魔法学をどこまで理解しているのか知らんが……俺以上に、魔法をうまく扱えるのは間違いない)


 常識的な思想の中でクロッカを誤解しているルーミッドは、

 どこかで、クロッカを応援しているところもあったりする。

 クロッカはワガママお嬢だが、悪い人間ではないし、

 ルーミッドに対して、無茶な要求をしてきたりもしない。

 上司として考えると、そこまで悪くない相手。

 もし、クロッカの権利が増して……もし、自分の直属の上司がクロッカに変わったら……と想像したルーミッドは、

 『まあ、別にそれでもかまわない。なんだったら、ガリオよりもいいかもしれない』

 なんてことも考えてしまう。


 ゆえに、センエースのことをどうするべきか、少し悩む。

 『あれは流石に危険な存在だから、ガリオ様の権限で処罰すべき』という報告をすべきかもしれない……と悩む一方で、

 『あの犬がいれば、クロッカ様の革命が、うまいこと果たされるかもしれない』などとも思う。

 それを無理して邪魔したいとは思っていない……というのも、ルーミッドの本音。


 冷静になった頭で、今後の行動について悩む。

 どうするべきか。

 何をなすべきか。


 色々と悩んだ末に、


「自分自身の目と体で確かめてから……決めるか」


 そういう決断を下した。




 ★




 休憩時間が終わって、

 一級試験が始まった。

 壇上に立つルーミッドは、ここまで残った3名に対し、


「一級試験の内容は、俺とのタイマン。俺に認められれば合格。持ち時間は一人20分。順番は、ビシャ、クロッカ様、センエース。以上」


 淡々と事務的に説明すると、

 そのまま、グラウンドへと出て、

 ビシャと向かい、


「さあ、かかってこい。お前の力を見せてみろ」


 そう言いながら武を構えた。

 そんなルーミッドに、

 ビシャは、


「すいません。少し質問したいのですが……勝てば合格ですか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ