168話 やつはセンエース八天王の中でも最弱。
168話 やつはセンエース八天王の中でも最弱。
吹っ飛んで気絶するラスを尻目に、
センは、ペっと、ツバを吐きながら、
「脆弱なゴミめ。やつはセンエース八天王の中でも最弱。モブごときにやられるとは、八天王の面汚しよ」
などと吐き捨てるセンに、
ゼックが、絶句した表情で、
「……あ、あのガキは、お前のかわいい教え子じゃないのか?」
と、尋ねてきた。
センは、シレっとした顔で、
「三級すら合格できないサ〇ヤ人など必要ない」
「……はい? サ〇ヤ……え?」
と、センのファントムトークに困惑をしめすゼック。
そんな彼に、センは、ちっちっちと、指をふりながら、
「いかんなぁ、ゼックくん。この程度の俺のヤバさに困惑しているようでは、今後、俺の身内としてやっていくことはできないぞ」
「……俺は、あくまでも、クロッカ様の陣営に所属するだけで、お前の身内になりたいとは、まったく思っていないんだが……」
などと、ぶつぶつ言っているゼックに、
センは、
「受け取れ、ゼック。我が眷属の証だ」
そう言いながら、球を投げ渡す。
受け取ったゼックは、その球を、大事そうに、アイテムボックスにしまいはするものの、
センに対しては、変質者を見る目を変えず、
「……この球は、『三級に合格するための球』で、『お前の眷属になった証』ではない」
と、バッサリ切り捨てていく。
ちなみに、そんなことをしている間に、
残りの受験生たちは、
ケイルスたち、『上位一組3人組』によって狩り尽くされていた。
……こうして、三級試験は幕を閉じた。
結果として、三級試験に合格したのは、
セン、クロッカ、ビシャ、ジバ、ケイルス、コータス、サバンス、ハロ、ゼック、バリソン。
この10名。
★
三級試験の結果を確認したルーミッドは、
(ワガママお嬢様の犬に……俺の試験が、目茶苦茶にされているな……)
普通にイライラしていた。
もちろん、こうなることも、三級試験が辿る流れの一つだろうとは思っていた。
しかし、ああまでも、主導権を完璧に握られてしまうと、
試験官としてのプライド……というか、シンプルに癪に障る。
怒り心頭のルーミッドは、
(一級までは仕方ないと思っていたが……できれば、次で落としてやりたいな)
そう考え……色々と頭をひねった結果……
「よし……決めた……」
次の試験の内容を決定。
その内容とは……
★
少しの休憩を経て、
『1組の教室』に集められた10人の受験生。
壇上に立つルーミッドは、受験生たちに向けて、
「それでは、これより、二級試験を開始する。合格条件は極めてシンプル……筆記試験で5割以上の点数を獲得する。以上だ」
そう言いながら、10人全員に、試験用紙を配布するルーミッド。
「試験時間は1時間。……用意、はじめ」
試験のルールは、確かに、驚くほどシンプルだった。
しかし、内容は激烈に難しいものだった。
合格ラインが5割以上……と聞いた瞬間だけは、『可能性あるかも』と考えた甘い者もいたが、問題内容を見た瞬間、『甘い予想をしていた者』は、総じて、『現実の厳しさ』を思い知ることになる。
ハロなんかは、
(……終わったな……一問も分からない……5割どころか、一行たりとも答えられない……)
勉強が得意なわけではないハロは、早々に投げ出した。
もちろん、必死に向き合いはするが、頑張ろうが、頑張るまいが、解けないものは解けない。
ケイルスたち、一組上位連中も、
(これは……流石に無理だな……難易度が高すぎる……魔法の研究者のトップ層でもないと解けない……)
学生レベルでどうにかできる内容ではなかった。
ケイルスたちが、このテストに挑むのは、
『普通の中学生が、数学オリンピックの難問に挑む』、
みたいなもの。
お手上げ以外に出来ることがない。