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158話 絶対に60人以上落ちる。


 158話 絶対に60人以上落ちる。


 試験内容が正式に変更された。

 変更された試験の概要、それは……


「三級試験の内容を発表する。このダソルビア魔術学院のどこかに、この小さな玉が10個、隠されている。それを一時間以内に見つけだし、俺のところに持ってくれば合格だ」


 ルーミッドが見せてくれた球は、ピンポンサイズの小さな鉄の球。


「球は全部で10個しか隠されていないから、合格できるのは最大10名。発見することが合格条件ではなく、俺のところまでもってくることが条件だから、途中で奪ってもいい。ルールは以上だ。それでは始めよう」


 この試験は、予備で考えていたもの。

 有能試験官であるルーミッドは、万が一の事態にそなえて、いくつか、予備の試験を考えていたし、そのための準備も進めていた。

 抜け目がなく、有能。

 十七眷属は、やはり、格が違った。


「ルールに関しては、非常にシンプルだ。どんなアホでもすぐに理解できることだろうと思う。ただ、難易度的には、かなり厳しいものになっているから、覚悟して挑め」


 この試験では『絶対に60人以上落ちる』というのが確定している。

 それが、かなりエグい。

 バランスを大事にするルーミッドは、なかなか、ここまで、エグイ倍率の試験を実地したりしない。


 試験内容を聞いた70名の受験生たちは、しんどそうな顔で、


(10人しか受からないのか……)

(前の3級試験では、もっと受かっていたと思うが)

(おそらく、四級で全員が残ってしまったから、締め付けが厳しくなってしまったんだろうな)

(四級試験では、つい本気の協力をしてしまったが、それは確実に失敗だった。……ゴール付近で裏切って、何人か落としておけば良かったか……)

(三級受かるのと落ちるのとでは天と地……絶対に受かりたい……絶対、絶対、絶対……)

(この試験内容なら、運しだいでいける……いける、いける……私は受かる……)


 ……残っている70人の中で、多くの者が『三級』を渇望している。

 二級や一級はどうでもいいが、とにかく三級は絶対に欲しい……と考えている者が、70名の中にたくさんいる。


 その渇望があふれ出てしまったのか、受験生の中の一人が、ルーミッドに、


「すいません、ルーミッド様。質問なのですが、合格できる最大数である10名の中には、クロッカ様も含まれるのですか? それとも、クロッカ様をのぞく10名ですか?」


 と、そんな、すがるような質問を投げかけた。

 ルーミッドは、ダルそうに、


「ここまでは、お前らに対して配慮してきたが……ここまでくれば、クロッカ様も、普通に審査の対象となる。というわけで、クロッカ様も含めて10名だ。ようするに、『合格できる実質的な枠は9名分』ということだな」


 その話を聞いた、一部の受験生が顔を青くして、


(クロッカ様も含めるんかい……ふざけんなよ……)

(そこは特別枠にしてくれよ……)

(もう、シード扱いでいいから……邪魔だけしないでくれ)

(9名……少ねぇ……いや、すくねぇよ……待ってくれよ、マジで……)

(ダソルビア魔術学院の1組上位が何人も残っている……それに、あの不気味な犬……)

(あの犬以外の二人の魔人も……四級試験で、かなりの実力を見せていた……)

(これ、まずいな……合格できる確率、かなり低いぞ……どうしよう……どうしよう……)

(私が三級試験を受けられる機会は……おそらく、もうない……ここで、つかみ取らないと……もうチャンスはない……)


 四級試験で、センが死羅腑を吹っ飛ばしてしまったので、

 『本来の実力的に四級試験は合格できない者』も、

 この三級試験にまで残ってしまっている。

 そのラインにいる者は『三級試験を受けられること自体が、この先の人生では、たぶんない。この幸運は絶対に掴む』と、かなり意気込んでいる。



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