153話 センエースの翼――セラフィムスパーダ。
153話 センエースの翼――セラフィムスパーダ。
「これから、お前は俺の剣。セラフィムスパーダだ。いいな」
「……」
力と、肉体と、名前……
そして、『無念を晴らしてくれる』という約束。
『全て』をもらった死羅腑……あらため『セラフィムスパーダ』は、
センの足元に平伏し、
「我が主……偉大なる力の王よ……これより、私は……あなた様の剣……」
と、誠意をむき出しにする彼女に、
センは、
「そういうのはいらねぇ」
そう言いながら、ヒョイっと、セラフィムスパーダを抱き起こす。
お姫様抱っこ状態で、センは、
「これから、俺は、お前を使って、この世界を混乱させていく。 好き放題やってきた上級国民どもに、てめぇの罪を数えさせてやらねぇといけねぇからな。『地位の高い自分は、身分の低い者に対して何をしても許される』という、その勘違いごと殺してやるんだ」
センの目的を聞いて、より一層、
センに対する忠誠心が増すセラフィムスパーダ。
センは、セラフィムスパーダが望む全てを与えてくれる。
センエースという超越者は、まるで、神が、彼女のためだけにオーダーメイドで仕上げてくれた王子様みたい。
「……セラフ。お前は、ただ、俺の命令に対し全力を尽くせばいい。俺の命令には絶対に従ってもらうが、それ以外の忠誠心とかはいらない。ご理解OK?」
「……はっ……かしこまりました……偉大なる王よ」
返事をしながら、喜びの涙を流すセラフィムスパーダ。
先ほどまでは、涙を流すことすら出来なかったが、
今の彼女はなんだってできる。
思いのままに泣きはらすことができる。
……最強魔人センエースのソウルレリーフとなったセラフィムスパーダは、
より解像度の高い知性と力を獲得することになった。
肉体、知性、名前、使命……何もかも全てを得たセラフィムスパーダの現在の存在値は470。
『存在値150ぐらい』が『上限』の世界で、
存在値500のセンが、存在値470の武器を手に入れた。
つまりは、『この世界を浄化しようとしている王』が、『この世界の上級国民を心底から恨んでいる決戦兵器』を獲得したのである。
最初から詰んでいるこの世界が、より明確に詰んでしまった。
ただでさえ無敵のセンエースが、さらに爆裂に強化されてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。
★
死羅腑をソウルレリーフ化させ『セラフィムスパーダ』という特異な剣にしたセンは、
「さて……ここからどうしようかな……」
空間魔法の中にぶちこんでいる『70人の受験生たち』に意識を向ける。
「決定的なシーンとかは見せていないから、いくらでもごまかしはきく……が、うまいことやらないと、のちのちで、色々とダルそう……さて、どうする……部分的に記憶をブチ消すか? できなくもないけど、100人近い数をやるとなると、絶対に、どっかでミスるよなぁ……」
記憶系の魔法も使えなくはないのだが、
記憶系は、消すタイプであろうと、捏造するタイプであろうと、
どれも、かなり難しく、
へたをしたら、修正不可能な廃人にしてしまう可能性がある。
「んー……まあ、諸々を総合的に考えると………………アホのふりして、すっとぼけるのが、一番楽かなぁ。……正直、『うまいこと場をこなす』よりも、ソッチの方が、遥かに得意だしなぁ……うーん……そうだねぇ……そうしようかねぇ……楽な方に流れておけば、だいたいのことは、どうにかなるんだ。知らんけど」
そう判断したセンは、
空間魔法を解除して、
この場に、寝ている受験生70名を出現させると、
「よっこらしょ」
その場で寝ころび、
大の字になると、
ゆらりと目を閉じつつ、
パチンと指を鳴らした。
すると、70名の受験生たちが一斉に、パチっと目をあける。
強制的な目覚め。
かるくボーっとしている頭を振りながら、
みな、のそのそと立ち上がる。