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152話 いつものワガママ。


 152話 いつものワガママ。


 ――死羅腑は、


「はぁ……はぁ……」


 しばらく殴ったあとで……息を荒くしつつ、腕を止めた。

 骨だけで、肺などないのに、何度も深呼吸をする。

 命だった時の残滓……生命への執着……

 分からない。

 分からないけれど、分からないから何だというのだ……。


「はぁ……はぁ……はぁ……はっ!」


 山ほどの想いを抱いて、

 死羅腑は、ギュっと心を引き締めた。


 そんな死羅腑から視線をそらして、

 天井を仰ぎながら、センは、


「やっぱ、いやだな。こういうのは……楽しくねぇよ。俺が『強さ』を求めたのは、『ムカつく理不尽』を、気分だけでぶっ飛ばしたかったからだ。……フリ○ザみたいな、分かりやすい反社クソ野郎を、気持よくブっ飛ばして、自分のワガママを貫く。それが俺のやりたいことだった」


 まっすぐに、ただの本音を口にして、

 死羅腑の貌を見ると、センは、続けて、


「……本当は、お前みたいな、しんどい胸糞と向き合ったりとかしたくない。お前みたいなやつからは目を背けて生きていたいんだよ。だから、この世界に来た時も、目を背けて隠居してたんだ……なのに……なんでだろうなぁ……なんで、俺は、クロッカに手を貸してんだろうなぁ……まったく……いや、わかっているさ……わかっているけど……やっぱ、ぶしつけに疑問符をぶつけたくなってしまうんだ……それが人間だ……今は魔人だが……魔人も人間も、違いなんかねぇ……無様で愚かで脆弱な弱い命……随分と強くなったつもりでいたが……そんなもん、結局のところは、『筋トレして筋肉がつきました』ってだけの話……その延長でしかなくて……だから、本当の意味では、たぶん……ちっとも、強くなんかなってねぇんだろう……」


 だらだらと、言いたいことだけを口にすると、

 センは、

 ソっと、

 死羅腑を抱きしめて、


「……苦しかったな。辛かったな」


「……っ」


 暖かさに触れて、

 死羅腑の中で、何かが揺れる。

 何が揺れているか、死羅腑にも、センにも、誰にも分からない。


「……俺じゃあ、お前の痛みを完璧にどうにかしてやることはできねぇ。けど……一緒に戦ってやることなら……できなくねぇ。たぶんな」


 そう言いながら、センは、死羅腑に、魔力を注いでいく。

 暖かで、穏やかで、美しい……そんな力の波動で満たされていく死羅腑。



「これは俺のワガママだから……お前の意見を聞く気はない。お前の全部を、俺の好き勝手にさせてもらう。『俺の中』でよどんでいる『お前由来の、この胸糞』を浄化するための道具として、これから、俺は、お前を使い倒す。文句は言わせねぇ。言ってもいいが、聞いてやらねぇ」



 好き放題に、『本音』だけを口にしてから、

 センは、死羅腑を『ソウルレリーフ化』させた。


 ソウルレリーフとは、命をかたどったもの。

 死んだ命や、その一部を浮き彫りにさせて、現世に顕現させたもの。

 生きている者でも、魂魄の一部をソウルレリーフ化させることはできるが、

 基本的に、ソウルレリーフは『死んだ者の力であったり形であったりを現世に顕現させるもの』である。


 センエースのソウルレリーフになった死羅腑は、


「な、なんという……」


 自身の中に流れ込んでくる力の波動に驚く。

 力が増したことにも驚いたが、それ以上に、


「に、肉体が……」


 骨だけの身体に、綺麗な肉がついていく。

 その見た目は、だいぶ美少女なソレであり、少し、クロッカに似ていた。


 センエースは、ただ、死羅腑を『所有物』にしただけではない。

 死羅腑に、力の一部と、自分の肉の一部を与えたのだ。

 ――さらに、


「名前もくれてやるよ。『正式な俺の所有物』である証……俺の眷属としてのコードを刻む。何がいいかな。……シラフ……シラフ……んー……アンデッドに寄るのはイヤなんだよなぁ。なんとなく。ここは、もっと、良い感じに聞こえる系統の方向性で行きたい。……となると……セラフ……セラフィム……セラフィムスパーダとかにしようか。これから、お前は俺の剣。セラフィムスパーダだ。いいな」



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