148話 雑魚の相手してる暇はねぇ!!
148話 雑魚の相手してる暇はねぇ!!
死羅腑が、
(っ……影泳ランク15っ!)
トプンと、影の中に沈んでしまった。
結果、完璧に回避されてしまう。
ベータ世界の受験生たちごときでは、わずかも理解できない、おそろしく高度なやりとり。
この世界における最強の王女たるクロッカでさえ、何が起きているのか、さっぱり分からない。
雷の鎖が、地面にたたきつけられた時に、爆音がしたので、
クロッカの視点だと、『きっと何かが起きているのだろう』ということは理解できているのだが、それ以上のことは何もわからない。
わかるはずがない。
「セン! なに?! なにがおきているの?! あれは、ただのスケルトンではないの?! 私の全力のフォースアイでも、ただのスケルトンにしか見えないのだけれど!」
と、クロッカから尋ねられたセンは、
「ちょっと、うるせぇわ……邪魔だ。クールに『ザコの相手』してる余裕はねぇ」
そう言いながら、両腕を胸の前で交差させながら、
パチンッッ!!
と、かなり大きめの音で指を鳴らしつつ、
(集団睡眠ランク20)
無詠唱かつ広範囲化させた眠りの魔法を放ち、
『クロッカ含むこの場にいるザコども全員』を、問答無用で眠らせると、
「限定空間ランク16」
安全な空間を作成し、
そこに、邪魔な受験生どもを押し込んでいく。
この場に存在するのがセンと死羅腑だけになったところで、
センは、
「真・武装闘気3!!」
全能力アップ系の魔法……その真髄を行使する。
全てのステータスを底上げしてから、センは、
「死羅腑さんよぉ……いつまで、影に潜っているつもりだ? 『様子見うかがい』とか、そんなクソタルいことはやめて、こっちで一緒に踊ろうや」
そう言いながら、
『影から対象を引き抜く魔法』を使っていくセン。
――センの『先天的な魔法適正』は、実のところ、そこまで高くない。
魔法の才能という点だけで言えば、ラスとかクロッカの方が遥かに上。
……だが、センは、異常な努力で、その差を盛大に補った。
初期能力こそ低めだったが、『オールラウンダータイプ』かつ『大器晩成タイプ』かつ『無限に地味な努力ができるタイプ』の彼が、『長い時間をかけて、地味で過酷な鍛錬を着実に積んできた』ので、今では、多種多様の魔法を扱えるようになっている。
今のセンは、どんな状況でも完璧に対応できる。
たとえ相手が、神級の不死種であろうと、『初見殺しでハメ潰されるような無様』は晒さない。
センは、
「おらぁあ!」
影から死羅腑を引きずり出すと、
あえて『追撃の一手』は打たず、
死羅腑に、ビシィっと指をさし、
「ここからはガチでいかせてもらうぜ。……光栄に思うがいい。お前のようなただのポップモンスターが、この超エリートに遊んでもらえるのだから」
流暢に、テンプレを叫びながら、
死羅腑に『殺し合い』を求めるセン。
死羅腑は、
「……」
そこで、スゥウっと擬態をといた。
『目の前のバケモノ(センエース)』が相手だと、擬態もフェイクオーラも、何の意味もないと悟ったから。
少しでも、『目の前に立ちはだかるやべぇ怪物』に削りを入れるため、
『全てのリソース』を『攻撃』に割くことを決めると、
「連続・死霊弾ランク16!」
無詠唱化も不可視化もとっぱらい、
『即死効果』と『火力』に全てブチちこみ、センへ発砲。
この死羅腑の一撃……実のところ、クロッカですら、『かするだけでも即死してしまうほど』の、激ヤバな魔法。
だが、センは、
「この俺に、即死を通そうって? そりゃ、無茶な話だ。俺は無敵なんだ。どんな状態異常もきかない。毒も麻痺も、俺には効果がない。なぜかって? 家庭の事情でね」