146話 神級。
146話 神級。
目の前に召喚された怪物を見て、センは目を丸くした。
眉間にグっとシワがよる。
体がブルっと、少しだけ震えた。
恐怖1割、武者震い3割、異常事態に対する興奮6割。
(……ま……マジかよ……は、初めて見た……)
センは、これまでに3回転生しており、
100年以上の時間を生きてきている。
その、そこそこ長い人生の中でも、
一度も出会えなかった階級のモンスター。
それが、今、目の前にいる。
(……『死羅腑』……神級のモンスター……すげぇ……『神級』って、ただの伝説じゃなかったのか……マジでいるのか……)
ちなみに、この場にいる者の中で、
センだけが、軽く震えている。
ほかの者はと言うと、
「大げさなワナで、何が出てくるかと思えば……なんだ、『スケルトン(最下級モンスター。存在値20前後)』一体だけか」
「ここまでに大量に沸いて出ていたのと同じ雑魚ね」
「それが一匹だけとか……笑わせてくれる」
「少なくとも五級試験を突破している受験生101人を相手にできるモンスターじゃないな、はは」
「誰が殺す?」
「ていうか、殺していいのか? 『これを殺してはいけない』っていうテストである可能性は?」
「合格条件は、ダンジョンの最深部にいくことだろ?」
「このスケルトンを倒してしまったら、最深部にいけなくなるってワナかも」
「もしくは、スケルトンを倒してしまうと、もっと上位のモンスターが召喚されるとか? そういうワナもあるって聞いたことがあるが」
「流石に、スケルトン一匹しか出てこないワナとか、ありえないしねぇ。何か裏があるのは間違いないでしょ」
セン以外の受験生の目には、
この死羅腑が、どこにでもいるザコモンスターのスケルトンに見えている。
これは、受験生が悪いのではない。
死羅腑が、『とんでもない精度の擬態魔法』を使っているだけ。
センの『研ぎ澄まされたシクススアイ』でなければ見抜けない超高位魔法を使われているので、セン以外では、絶対に見通せないというだけの話。
ちなみに、この死羅腑の存在値は……
(存在値430……すげぇな……さすが神級は、そこらの雑魚と、格が違った。……これまでの世界で、何度か、『歴史に名を刻んでいる龍』とか、『国を滅ぼした鬼』とか、『神話になっている悪魔』とか、そういう伝説級のモンスターとも戦ってきたが……この死羅腑と比べれば、どいつも、ゴブリンと大差ない……本当に、すげぇ死のオーラだ……)
ダラダラと冷や汗をかいているセンを尻目に、
後ろにいるクロッカが、
「どうしたの、セン。なにやら、具合が悪そうだけれど?」
「具合は別に悪くねぇよ。どう対応するのがベストか、頭使っているだけさ」
「どういうこと? あのスケルトンに、何か問題でも? やはり、あれを倒してしまうと、何か問題があるの? 正直、私の目には、ただの糞雑魚にしか見えないけれど、もし倒さない方がいいのであれば――」
(倒せるわけねぇだろ。お前らみたいな雑魚に、これほどのモンスターを。……俺ですら、へたしたら殺されるレベルだぞ)
『不死種』系統のモンスターは、『ガチスケルトンのようなマジ下位個体』だと、知性が低く、動きもにぶいので、『ある程度鍛錬した冒険者』なら問題なく倒せる。
が、『不死種の上級種』は、とにかく、知性が高く、動きも素早く、全てのステータスがハンパなく高い。
厄介な特殊スペシャルを複数有していることも多く、基本的に、弱点も少ない。
最上級のトゥルーヴァンパイアまでは、まだ、ギリギリ、弱点っぽいものも残っているが……トゥルーヴァンパイアよりも上になると、耐性値が極悪になってくる。
なんでもありのルールで『ガチンコの殺し合い』をした場合、龍や鬼でも、完封されてしまう可能性があるのが、不死種の怖いところ。